――俺は今、人生最大の勝負に挑もうとしている。

(いいのかな。本当に花束でいいのかな。でも俺圭さんの好きなモノってビールとチー鱈とホラーとデザインくらいしか知らないし・・・流石にチー鱈持って告白ってわけにも・・・いや、圭さんは喜びそうだけど)
俺は今以前彼女が城を造っていた公園で彼女を待っている。
(まだ20時だから平気だと思ってたけど・・・やっぱり駅まで迎えに行った方がよかったかな。しかし花束持って駅で待ち構えるとか、その時点で言っているようなものじゃ・・・っていうか!それはここでも同じか!!)
慌てて花束を隠す場所を探していると、待ち人の声がした。

「黒澤くん」
「圭さん!!」
隠しそびれた花束は、ばっちり圭さんの注目を集めている。
「呼び出してすみません」
「ううん。通り道だし。待たせちゃった?」
「全く問題ありません!」
俺の食い気味の反応に、圭さんは少し笑った。
「それで、どうしたの?」
「圭さん、俺、内定もらえたんです」
「それはめでたいね。お疲れさま。・・・それで花束??」
「いえ、これは・・・圭さんに」
なんだか格好がつかない気がするけれど、俺は花束を圭さんに差し出した。
圭さんはなんで自分が花束をもらうのか分からない、というように目をまたたかせている。

「圭さん。俺を最後の砦だと思って、したいように生きてください」

「なに、言って・・・」
「この前、圭さんを送ってきた人に事情を聞きました。勝手に聞いてすみません。・・・俺、まだ働き始めてもいないけど、圭さんを支えられるような人間になってみせます。だから、」
「馬鹿言わないで。黒澤くんにもやりたい事があるでしょう?」
「俺が目指しているのは、立派な人に成る事です」
「立派・・・」
「笑って一日を過ごして、いい気分で眠る事。それを自分で叶えられる人に成りたい。悪い志だとは思いません」
「・・・うん、素敵だと思う」
「圭さんの笑顔を思い出しながら、眠りたい。だから俺は、圭さんの笑顔を守れるようになりたいんです」
不可能だと分かってはいるけれど、俺の気持ちが1mmの狂いもなく彼女に伝わるように。俺は必死に言葉を紡いだ。

「なんだか・・・プロポーズみたいだね」
「そう、とってもらってもかまいません!!」
「ありがとう」
「圭さん・・・!」
「私も、頑張ってみる。ひとりでも、大丈夫なように」
際限なく上昇した気持ちが、一気に下降する。
やっぱり俺じゃ駄目なのか、そう、思いかけた時――圭さんがふわりと笑った。
「でも、どうしようもなくなったら・・・寄りかからせてもらっても、いいかな」

「喜んで!!大好きです圭さん!!」
俺の大きな声と花束を潰しそうな勢いの抱擁に、圭さんは珍しく慌てたような声で俺をたしなめた。
そしてその後――俺よりも大きな声で彼女は叫んだ。
「好き!?黒澤くんが私を!?」
全身全霊をかけての告白が伝わっていなかったのかと脱力しそうになったが、圭さんらしいやと結局笑ってしまった。
俺は抱きしめた腕を放さずに、至近距離で圭さんを見つめる。
「そうです。好きです。もちろんloveの方ですよ!」
俺の言葉に頬を染める彼女を見る限り、同じ言葉をもらえる日が来るのも夢じゃないと思う。
それまで何度でもコンビニでビールを買う彼女に話しかけよう。
彼女が部屋に入るのを見届けたり、時々城を造りだす彼女を迎えに来よう。
彼女が眠る時には笑顔になれるように――楽しい事を、たくさんしよう。





青年の主張は常識を覆す
――もうすぐ、うだる程に暑い、学生最後の夏が来る。









*an afterword
人生とは、いつ何が起こるか分からない奇怪なモノですよねぇ・・・。
黒澤さんのような人が現れてくれたらいいんですけど、現実にそんな事はなく(でもあるかも知れない。あったらいいなと思ってる!)、人生は自分で切り開いていかないといけない、という悲しい現実(ノД`)
軽く読める楽しいお話にしたかったのですが、主に黒澤さんが苦悩するというお話になってしまいました・・・。
もっと素敵なお話が書けるようになりたいです。最後までお付き合いいただきありがとうございました!!
20140111


 
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