地を抜けるネズミ。



木の根をくぐり



小汚いポケットに収まった。





「おーい!兄貴ィ姉貴ィ」



ヤンガスに呼ばれて立ち上がると



軽く背中を伸ばして渋々の所に向かった。


「あ、姉貴」


兄貴も来て下せー!!!とまた一言かけるとエイトも立ち上がりこっちに来た。




「何かよう?」
僕がヤンガスに聞くと



「『何かよう?』じゃないじゃろうが!!!姫が居なくなったのだぞ!!!!!!」



トロデ王が喚いていた。
こっちをみて怒りで顔を真っ赤にしている



「…あ、本当だ」
辺りを見渡してみるが、確かにミーティア姫の姿は見えない。



茂みの中をガサガサして、「ひめー」と呼んでみたが、姿はなかった。



「馬鹿者が!!!!姫がそんなとこにいるわけないじゃろうが!!!!!!」



さらに、怒りを逆なでしてしまった所でヤンガスが口を開いた。



「…にしても兄貴と姉貴がこのおっさんの家来だなんて考えられないでゲス」




「僕とエイトはトロデーンの近衛兵なんだ。全く王は人使いが荒くて………」




「おっさんとはなんだ!!!なまえもふざけるんじゃない!!………えぇーい話がそれてしまったではないか!!!姫ー!姫は何処じゃー!!!」




草むらの中探していたら、またトロデ王に怒られたが、僕はここから音がしたような気がしたので、引き続きガサガサと漁った。



「なまえ!そこを離れて!!!」

エイトの声に反射的に反応し、即座に飛び退けると同時に



草陰からガサガサガサっと音がしたと思うと


スライムが思いきり飛び掛かってきた。



「兄貴!姉貴!」



「わかってる!!!!」


剣を抜くとスライムに飛び掛かる



エイトが素早い動きで戦闘する

頭に付けたバンダナと丈の長い服が揺れる、真面目な顔が、凄くカッコイイと思って若干見とれていたら



顔にスライムがべしゃっという音を
たてて攻撃してきた

精神的にもダメージを受けた僕は



「死ねェェ!!!!!!」

そのスライムを思いきり切り裂いた



(僕がエイトに見とれてるのにコノヤロー!!!!!)



ヤンガスが最後の一匹を倒すと
落ちているゴールドに手をかける




「ふはは。この3Gはいただいていってやるからなバカなやつめ」



「姉貴ィ、誰と話してるんゲス?」



「スライム」



「あ、姉貴は魔物とおしゃべりが出来るんゲスか!!!!!」



「しらねーよ」


すこし向こうで

「なんだそれっ」とエイトが笑っているのを見て、

耳まで血が上がってきた。


「そ、そういうことだ!!」

意味のよくわからない返事をして
若干赤くなる頬を押さえていた。





その後、ミーティア姫が
帰ってきたが、足でふまれそうになった。

馬に踏まれるとめちゃめちゃいたいんだよ姫、ダメだよそんなことしちゃ

とかは言えないので、サッと交わしてエイトの隣に逃げた。





おっさん…もとい、トロデ王の提案で
トラペッタに向かう。
何やら、トロデ王とミーティア姫の呪いを解いてくれるという、『マスターライラス』という人が住んでいるらしいのだ。



「酒〜〜」

ヤンガスは楽しそうに走る。




僕は、西に傾き始めた日を眺めていて、足元への注意を疎かにしていたことに罰が下ったのか、
足元にあった石に引っ掛かり思い切りつまづいて転ぶと



「………大丈夫?」



エイトが心配してくれたのだが、恥ずかしいような、嬉しいような気持ちがごちゃごちゃした。



「大丈夫デス!」



なんちゃって。
全然大丈夫じゃないっつーの、うん



照れる僕に気付いたのか
ミーティア姫が顔をぶつけてくる。

………はいそうですよね…



このぐらいでめげる僕じゃないんだからな!!!



「どうしたの?」




………相変わらず超鈍感だな



ミーティア姫も、僕も。
エイトの事が好きなのにね。




スラリと高い身長、揺れるバンダナ、真っ直ぐにこっちを見る真っ黒な瞳も、優しい所も、全部好きだと何年も想ってきたけど。

二人とも、かわされて来た。
鈍感過ぎるのだ。
むしろ、わざとではないかと疑うほどに。


叶わない恋だと知っているつもりだ。



僕じゃ、ダメだとわかっているから、お願いだから今だけでも、側にいさせて欲しいと思う。




この旅がいつまで続くかわからないけど。







































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