犬の昼寝

「シリウスって、嫉妬深かったんだ?」
「あ?」
「ジェームズ達と手を組んで、私に近寄る男子に悪戯仕掛けてるんだって?」
「な、訳ねーだろ」
「リリーから聞いたよ。リリーはジェームズから」
「あの野郎…」

もうすぐ午後の授業が始まる昼休み。
私とシリウスは談話室にいる。
ソファに寝転がっていたシリウスが起き上がり、頭を掻きながら照れくさそうに唇を尖らせている。

「ガキンチョ」
「…ガキで悪かったな」
「認めるんだ?」
「あーもーうるせえな」
「いたっ」

頭をぐりぐりとやられ、ぐちゃぐちゃになった髪を文句を言いながら直す。だが、シリウスに頭を触られるのは嫌じゃない。不器用で大きな手が私の心を暖かくしてくれる。

気付くとシリウスはまたソファに寝転がっていた。
窓から入る陽に当たっている姿は、まるで日向ぼっこをしている犬。
シリウスのアニメーガスの姿を知らなくても、きっと犬に見えるだろう。

「シリウス」
「なんだ?」
「あの雲、ケーキに見える」
「…お前なあ」
「なによ」
「今の雰囲気にそのセリフは無い」
「今、そんないいムードだった?」
「ちったあ静かにしろ」

あの手が誰かに触れていたら、私も嫉妬してしまうかも。きっと、するだろうなあ。

「ねえ、シリウス」
「うん?」

ソファに転がるシリウスに近付けば、優しい声色で私を伺う。そのまま黙っていれば、ほら。

「犬みたいな奴」
「いや、シリウスには言われたくないかな…」

頭を撫でられ、今にもごろごろと喉を鳴らしてしまいそうだ。心地良さに身を任せていると、午後の授業の始まりを示すベルが遠く聞こえた。

「私、優等生なんだけどなあ」
「安心しろ、俺もだ」
「嘘ばっかり」

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