暑い熱い頬


「──…蒸し暑い、」

真夏の照り付ける太陽の下、日陰という逃げ場所が少ない屋上で、隣の男が苦々しげに呟いた。
午前中に雨が降ったせいか、彼の言う通り、ただの暑い、じゃない。蒸し暑い。

Yシャツが肌に貼り付く程に汗をかいていて、額からも雫を垂らしながら虚ろに空を睨み付けている彼を横目に、俺はへらりと笑みを浮かべる。

「何でついてきたのー?教室のがクーラーあんし、超涼しいじゃん」

「お前こそ、何でこのくそ暑い日に屋上に上がるんだよ」

「えー?…光合成するため?」

いつも通り軽い口調で告げると、鋭い眼光が俺へと向けられる。怯まずに適当な答えを返してみれば、馬鹿か、と一言。
更に小さな笑いだけを返して眩しい空を見上げて目を細める。

と、

「ッ、」

視界が一瞬暗くなったと思うと次いでチカ、と火花が散る。周りの音が遠退くような、変な感覚。
次の瞬間、痙攣したように俺の体が跳ねて、全身の力が抜けた。

意識せずに隣に座る彼の膝へ頭を乗せるような格好になると、おい、と驚いたような声があがる。
目を開けている筈なのに暗い視界に火花がちらつく視界に気持ち悪さを覚えて、俺は一度目を伏せた。

カッコ悪、

「おい、大丈夫か?」

「ごめ…貧血、的なのかも…」

チカチカする、と呟くように告げて自分の腕を目元へと置くと、汗なのか何なのか、肌がベタついて更に気持ち悪かった。
小さな溜め息が上から降ってきて、俺は再びごめんね、と返す。

「…お前、昔から体弱いなんだから、いい加減自覚しろよ」

低く注意された言葉に苦笑を溢しかけて一瞬の間を開けた後に、あれ、と彼を見上げる。
脱力感は取れないものの、ちらつくような変な感覚は既に消えていた。

「…もしかして心配して、ついてきてくれた?」

ふと湧いた疑問をそのまま口に出すと、彼の耳が微かに赤く染まる。…それに釣られて、俺の顔まで少し熱くなった。

「…うそ、マジ?」

「…悪ぃかよ」

照れ隠しか素っ気なく反らされた顔を見上げつつ、俺は頬を緩ませた。と同時に湧いた、ちょっとした悪戯心。

「ちゅーしてくれたら、復活するよー。…なーんて…ッん、」

…近付いた彼の顔と、唇への柔らかい感触に、脱力感とは別に体を動かせなくなった。

え、と唖然と彼を見上げていると無理矢理体を起こされて、立ち上がらせられる。

「復活したろ、早く教室で涼むぞ」

またも素っ気なく告げられる言葉と反対に優しく引かれる手。
太陽からの熱とは別に、俺の顔が一気に熱を持った。



多少蒸し暑くてもいいから、今すぐ水を浴びて、この熱を蒸発させたい。

そんな馬鹿な考えを頭に浮かべる俺と、頼りになる幼馴染みの彼とが、水蒸気のような曖昧な一線を越えた夏。




*……‥‥
心配性男前と病弱チャラ男の相互片想い。
友情を越えられないこのモヤモヤ感が好きです。



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