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おねだり攻防戦




「お前……今、自分のことかわいいと思ったでしょ。」

カカシ先生は呆れた顔であたしに言った。でも、先生が本当は呆れてなんていないってことをあたしは知っている。本当は呆れてるんじゃなくて……

「せんせ、あたしのこと可愛いって思ったんでしょ?」

カカシは困ったように眉毛を下げて頭を掻いた。
隣に座っているカカシ先生の太股に手をついて、わざと先生を見上げるように見つめる。こうすると自然と上目遣いになるのだ。男はみんな女の上目遣いに弱いって、いつだったか綱手様が言っていた。

「……ヒメそんなのどこで覚えてくるの。」

「出会った頃はあんなに純粋だったのに…」と盛大に溜め息を漏らす先生が、ちょっぴりいじけているように見えてなんだか可愛い。あたしよりも年上なのに。
もうちょっと先生に意地悪したくって「心配になる?」とわざとらしく首を傾げてみたら、先生はまた大きな溜め息をついた。「……大人をからかうのはやめなさい。」そう言って先生は額を押さえて項垂れた。

「えへへ、ごめんね。でもカカシ先生、こーゆうの嫌いじゃないでしょ?」

ちょっと萌えてるって知ってるんだから。そう言って、にししと肩を竦めて笑っていたら、突然、強い力で腕を引き寄せられて―――

「ちょっとっていうか……かなり萌える。」
「〜〜〜っ!」

すぐ目の前にカカシ先生の顔がある。さっきまでの困ったような声とは違う―・・・低く甘い声に思わず身悶えた。熱の籠った瞳で真剣に見つめられて心臓がどきどきする。

「そんな顔で言うなんてずるい……」
「ん?なにが?」

先生はわざとニコッと微笑んだ。あたしがカカシ先生の反撃に滅法弱いと知っているくせに。

「で、お前は何をして欲しかったわけ?」

にやり。カカシ先生が意地悪く笑って言った。あたしは核心を突かれてどきりとする。恥ずかしくて誤魔化し笑いを浮かべながら恐る恐る先生の顔を見た。「ヒメがこんな風に仕掛けてくるってことは何かして欲しいことがあったんでしょ?」先生は愉しげだ。

「〜っ!」

図星を突かれて、一気に顔に熱が集まる。思わず、カカシ先生から視線を反らすけど、長い指で顎をくいっと上にあげられてしまう。カカシ先生の色違いの瞳と視線がぶつかる。まるで先生に心臓を握られてるみたいに苦しくって動けない。先生を見つめたまま硬直しているあたしに、先生が顔を近づけてきた。そして、鼻と鼻がくっつきそうなほど近くで「ね、教えてヒメ。お前のしたいこと全部。」と囁かれる。

「せんせー………ちゅーしたい。」

息の仕方も分からなくなるほど、どきどきして蚊の鳴くような声で言った。それでも先生は満足そうに口の端をつり上げてにんまりした。

「はい、良くできました。」

先生の手に頬を包まれたかと思うと、唇を重ねさられる。唇がくっつくだけのキス、それだけ。先生の唇はすぐに離れてしまった。あたしは予想外のキスに呆気に取られて、そのあとすぐにもっと熱い口づけを期待していた自分のはしたなさに恥ずかしくなった。

「どうしたのヒメ、物足りなかった?」

くすくす笑って「あーほんと可愛い。」とあたしの頭を撫でるカカシ先生が憎らしい。聞かなくったって分かってるくせに……
あたしは少しむっとして、先生の服の襟元を掴んで引き寄せた。睨み付けるようにカカシ先生を見上げて―――

「だめ、全然足りない。もっとして。」

言った瞬間、カカシ先生にがばりと抱き締められた。後頭部をぎゅーっとされているからちょっとだけ息が苦しい。先生がはあ、と息をつく音がする。

「最近の女の子は積極的すぎて困るよ………」

先生のぼやく声が聞こえて、あたしは先生の胸の中でほくそ笑んだ。