×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

ふたり






「オレ、名前を守るために生まれてきたんだと思うんだよね。」

恥ずかしげもなくキザな台詞を言ってのけた幼馴染にあたしは思わず吹き出して「なに馬鹿なこといってんのさー!」と軽く肩を叩いた。

「もう、カカシってば飲み過ぎなんだから。」

あたしは呆れながらも心がじんわりするような幸せを感じていた。





秋の夜長に読書に耽っていたらふと、コツコツ窓を叩く音がしてカーテンを開けると窓のサッシに鳥が止まっていた。こんな夜中に鳥なんてと不思議に思って、しばしの逡巡のあと忍鳥だと気がついた。

忍でもないあたしがそれを忍の連絡手段だと知っていたのは時々訪ねる幼馴染の家で何度か目にしたことがあったから。大抵カカシは鳥の足に括り付けられた紙切れに目を通した後は「ごめん、名前」と眉を下げて困ったように笑って窓から出て行ってしまう。

恋人でも、ましてや過酷な任務で命を預け合う忍の仲間でもない、ただの幼馴染のあたしに合鍵まで渡すカカシにちょっと無防備すぎやしませんか?あたしが悪い女だったらどうすんだ。と呆れつつ、夜遅くに帰ってきても胃に負担がかからないようなメニューのご飯を作り置きして、カカシが飛び出して行った窓の鍵をきちんと閉めて家路につくあたしもどうにかしているけれど。

そんなあたしをカカシの忍仲間たちは信頼して、今日は珍しく酔払ったらしい彼のお迎え係に使命してくれるのは嬉しかった。





夜道を歩くカカシの足取りも横顔も全く酔っているようには見えない。もし、ここであたしが暴漢に襲われたって瞬殺できるほどにはしっかりしている。それでも酔払っていると分かるのは、カカシのあたしを見る目がどきりとするほど甘くて妙に饒舌だから。

さっきのキザな台詞だってあながち間違ってはいないのだ。子供の頃からずっとカカシはあたしが困っているときは必ず助けてくれる。
そういう記憶に思いを馳せて、やっぱりあたしの隣を歩く幼馴染が大切だと思い知って胸がぎゅっと締めつけらける。

「カカシ、お誕生日おめでとう。」

心の底からそう思って、立ち止まってカカシを見上げた。そうしたらカカシはスッと瞳を弓なりに細めて微笑んで言った。

「名前も誕生日おめでとう。」

そう言われて胸がきゅんとする。そうしてしばらくカカシの顔を見つめていたら、はっとする。

「あ。カカシ、あたしプレゼント用意してない。」

するとカカシも困ったように頭を掻いて「オレも。」と笑うから、つられて笑ってしまう。幸せだなぁ、と思った。

「カカシ、欲しいものある?」

そう問いかけるとカカシしはニッコリして言った。

「名前が幸せだったら充分。」

なんだか夢の中にいるみたいだ。

「そっか。それならあたし充分すぎるぐらい幸せだよ。」

あたしの答えにカカシの嬉しそうに笑った。あたしにはそれがたまらなく幸せで、できればこれからもずっとカカシのそばにいたいと思える。

「カカシ」
「んー?」
「ん!」

あたしはカカシの方を真っ直ぐ向き直って、両手広げて前に突き出した。飼い犬を迎えるようなあたしのポーズにカカシは小さく笑って、それからカカシも腕を伸ばしてそのままあたしをぎゅっと抱き締めた。
あたしはカカシの胸にぴったりとほっぺをくっつけていたら、やっぱりここがあたしの定位置だと思った。

「これからもずっと名前のそばにいれたらいいのにね。」
「うん……あたしもそうなればいいなって思った。」

もうお互い、いい歳なのに夜道のど真ん中でぎゅうぎゅう抱き締めあっているなんて端から見ればバカップルだろうけど。それでもあたしたちはしばらくの間そうしていた。