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狼さんにご注意を






「名前さんって、彼氏いるんですか?」
「へっ……?」

暗部の後輩であるカカシくんと書庫の整理をしていたときのことだ。いつも飄々として、そつなく任務をこなす彼から突拍子もない質問されて危うく脚立から落ちそうになった。両手に巻物を持ったまま脚立のてっぺんで間抜けに固まってしまう。下からカカシくんの呆れたような溜め息が聞こえたかと思うと、脚立が軋む音がした。

「だから、名前さん彼氏いるの、いないの?」

脚立の上まで来たカカシくんの顔が目の前に現れて、また脚立から落ちそうになった。バランスを崩したあたしをカカシくんが咄嗟に支えてくれる。その顔は心なしか不機嫌なように見える。腰に回されたカカシくんの腕にどぎまぎしながら、できるだけ冷静な声で言った。

「急にどうしたの?」
「別に急じゃないけど。」

あたしを見上げるカカシくんの長い睫毛を恨めしく思いながら、じっとカカシくんの顔を見た。どこも変なところは無さそう。それどころかちょっぴり気怠げな表情からはカカシくんが何を考えているのかさっぱりわからない。あたしはカカシくんの意図を推し測るのを諦めて「残念だけど、いないよ。」と返事をして、持っていた巻物を棚に戻す作業を再開させた。

「ふーん。オレは全然残念じゃないけどね。」
「どうせ寂しい女ですよ……ん?あれ?カカシくん今なんて……?」
「だから、名前さんのことが好きだって言ってんの。」
「へっ……えええーー!?」

突然のカカシくんからの告白にあたしの心臓が飛び上がった。ついでにあたしまで飛び上がってしまって、今度こそ脚立の上から真っ逆さま。
床に叩きつけれる衝撃に備えて咄嗟にぎゅっと目を瞑る。いくらカカシくんがイケメンといえど、年下の男の子に告白されて驚きのあまり受け身も取れないなんて暗部としてどうなんだろう。ていうか、いい歳して何やってんのあたし。

「……あれ?」
「はあ…大丈夫?」

床にぶつかった痛みはいつまで経ってもやってこなくて、恐る恐る目を開けるとカカシくんの腕が背中と膝裏にしっかりと回させれていた。あたしはカカシくんにお姫さま抱っこされているのだ。
若干呆れた顔であたしを見下ろすカカシくんとの距離の近さに心臓がばくばくいっている。もう、何がなんだか訳がわからない。

「ちょっと、待ってカカシくん。思考が追い付いてない。」

カカシくんの腕の中で深呼吸をして、冷静になろうと努めてみるけど効果はない。え、だってカカシくんがあたしを好きで、そんなカカシくんに抱き抱えられてて……だめだ、胸きゅんなんてしばらくしていないせいか完全にキャパシティーオーバー。
どうしていいか分からなくて、その場しのぎにカカシくんの顔を見上げたら―――・・・にやり。カカシくんは人の悪い笑みを浮かべていた。すぐ目の前にカカシくんの顔がある。色違いの瞳と視線がぶつかって、あたしは少しも動けない。

「混乱してる名前さんにも分かるように言ってあげる。」

「名前さんが好きだよ……ずっと前から。」そう耳元で囁かれて、思わずビクッと肩が跳ねてしまう。カカシくんはそんなあたしのことを満足げに口の端を吊り上げて見下ろしながら次々と言葉を紡ぎはじめた。「名前さんの手が好き。」「声が好き」「ちょっと、おっちょこちょいなところ」「意外と胸が大きいこと」最後の方はなんだか怪しいような気がしたけれど。兎に角、カカシくんは止まることなくあたしの好きなところを言ってのけた。

「ちょ!ストップストップ!分かったからもうやめてー!」

始めのうちは饒舌なカカシくんに関心していたのに、途中から羞恥心でそれどころでは無くなった。あたしは堪らなくなって両手で自分の顔を隠してカカシくんを制止した。カカシくんは「あれ、もういいの?」なんて声を弾ませている。

「も、もう充分です……」
「そ?残念。」
「あ、あのさカカシくん。そろそろ降ろしてくれない?」

そういえば抱きかかえられたままだったことを思い出して、手のすき間から愉しげなカカシくんをチラリと見ながら言うと。「いいけど、もうひとつ言いたいことあるんだけど。」と言われて、あたしは黙ってカカシくんを見上げた。

そうしたらカカシくんは極めつけに「すっごい、名前さんとヤりたいんだけど。」と言った。

「カカシくんのバカ!変態!」

ちょっとでもカカシくんにきゅんとした自分をぶん殴りたくなった。カカシくんの告白が嘘じゃなかったことはすぐに分かったけれど。こんなことって!
若いって怖い。

カカシくんに抱き抱えられたまんまなのは危険だ。とにかくカカシくんから離れようとジタバタしてみたら、カカシくんにニコッと微笑みかけられて、心臓がヒヤリとする。

「あきらめなって。名前さんの乱れた姿、オレに見せてよ?」

わざと耳元で熱っぽく囁かれて、あたしはついに動けなくなった。ほだされちゃダメだと分かっているのに、あたしの体の奥は甘く浸食されはじめていて……もうどうにでもなれ。