肱をついて、ぼんやり車窓の風景を見ているカカシ先生が絵になりすぎて、思わずじーっと見つめてしまった。
先生の綺麗な銀髪は太陽の光りを受けてキラキラしている。ちょっと眠たそうな目とか口元の黒子とか、昔、実験に失敗して出来てしまった目元の傷すらもかっこよくて、あたしはうっとりした気分になった。
あたし、今、カカシ先生とデートしてるんだ。
そう思っただけで胸がきゅんとして息が詰まりそうになる。
科学のカカシ先生はあたしの好きな人だ。「先生と生徒」そんな関係のあたしたちがどうしてデートしているかって?それは、科学は万年赤点低空飛行のあたしが学年末の試験で90点以上採れたら春休みにデートするっていう賭けをしてあたしが勝ったから。
「ん、どうしたの?」
「…っ!」
不意にカカシ先生があたしの方を見た。ばっちり目が合って思わずたじろいでしまう。先生は眉毛を下げてにこっと微笑んでいて。かっこよすぎて心臓がドキドキして声が出ない。
「あ、えっと…先生、かっこいいなって…」
「なんか、そんな真っ赤な顔で言われるとこっちまで照れちゃうね。」
あたしはしどろもどろになりながら、やっとのことで声を絞り出した。それなのにカカシ先生ときたら照れてなんていないくせに、困ったように眉毛を下げている。
「お前も可愛いよ。」
カカシ先生の大きくて優しい手に頭を撫でられて、心臓がびくっと飛びはねた。顔から火が出そうなぐらい熱くなって、口をぱくぱくさせて固まっていたら「はあ…もう、可愛いすぎ。」カカシ先生が頭を抱えて、何かぼそぼそと呟いた。
「え、なに?先生。」
「んー……?ま、あんまり気にするな。」
「それより、まさかお前が90点以上採るとは思ってなかったよ。」そう続けたカカシ先生は予想外とでも言いたげな顔をしていた。あたしは内心、失敬なとでも言ってやりたかったけれど、そんな事を言えるような成績ではないので大人しく口をつぐんだ。
「うん!頑張ったんだ〜、それに今回は先生が良かったの!」
シカマルくんて本当、頭良いですよね!と話したら、カカシ先生はもっと誉めてくれると思ったのに先生の反応は予想反して冷たかった。
「ふーん、シカマルねぇ…。」
「カカシ先生……?」
先生は面白くなさそう顔で言った。もしかしてカカシ先生はシカマルくんがあまり好きではないのかもしれない。だって、シカマルくんは授業中に起きている所なんて見たことないのにテストの成績はいっつもいいだもん。
「次のテストはオレが教えてやるから、科学準備室に来なさい。」
「えっ!で、でも…それって贔屓にならない?」
突然の先生の言葉に驚いて思わず目を見張った。嬉しいけど、カカシ先生はえこひいきだって他の先生たちに怒られないかな……
ちょっぴり心配になって眉間に皺を寄せていたら、先生の低くうねるような声で名前を呼ばれて――
「お前に拒否権はないの。二人きりでみっちり教えてやるから覚悟しなさい。」
にやりと意地悪く口の端を吊り上げたカカシ先生の瞳に捕らわれて心臓が射ぬかれる。あたしは思わずひっくり返ってしまった声で「はい。」と返事をした。