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カカシに前髪切ってもらう

「はあ、お前……また切ったの?」

カカシは大きな溜め息ついて、あたしの不揃いな前髪をつまんで言った。
眉毛を下げて呆れた顔をしているくせに、あたしを見つめる瞳には心配の色が滲んでいる。あたしはそんな視線がいたたまれなくて、思わずそっぽを向いた。

「別に……カカシに関係ないじゃん。」
「関係ないって、お前……オレはこんなガッタガタの前髪の女の隣歩きたくないよ。」
「じゃあ、一緒にいなくていいじゃん。」
「はあ……お前ってほんとめんどくさいよね。」

カカシから視線を反らしたまま部屋の隅を見つめていたら、カカシが立ち上がる気配がした。
ああ、ついにカカシにも本気で呆れられちゃったなあ……と心臓がぎゅっとなる。

カカシとあたしは所謂、幼馴染というやつだ。もう、何年も一緒にいるからカカシはあたしの悪い癖………嫌なことがあると前髪を切ってしまう癖をよく知っていた。
ハサミを入れたときのシャキンという音の、何ともいえない爽快感のせいか大人になった今でもやめられないのだ。

その度にカカシはガタガタの前髪にか、任務で失敗ばかりするあたしにか「お前って、ほんと不器用。」と呆れたように笑って言う。あたしはいつも不貞腐れてそっぽを向いてばかりだけれど。

「ほら、こっち向いて。」
「やだ。」
「意地張らないの。」
「意地なんて張ってな…い!?」

カカシがあたしの側に戻って来た気配がして少しほっとしているくせに、意地を張ってカカシの顔を見られないままでいると―――片手で両頬をぎゅっと掴まれて無理やり目線を合わせられる。

「……にゃによ。」

カカシを睨みつけてやるけど、ほっぺのお肉がぎゅっと顔の真ん中に寄せられているせいで変な喋り方になってしまうからイマイチ効果はなさそう……

「ガタガタ過ぎ。」

意地悪なことを言うわりにカカシの声色も表情も慈しむような優しさを含んでいて胸がきゅんとする。何も言えないままカカシを顔をじっと見ていたら「じっとしてて。」と言われて、何をされるんだろうとじわっとした期待が込み上げる。
カチャと金属音がしてあたしの目の前にはクナイが飛び込んできた。あたしは思わず、ぎょっとして「カカシ!?なにするつもり!?」と大慌てだ。カカシはそんなあたしに顔色ひとつ変えずに「なんかされたかったわけ?お前は。」と呆れた声で言った。

「ほら、暴れてると前髪なくなるよ。」
「え、あ……」

シャキ、シャキっとリズミカルな音がしたかと思うと「はい、できた。」と言う声が聞こえた。恐る恐る前髪に手を伸ばしてみると、あたしが切ったのよりも大分短くなっているように感じる。

「カ、カカシ……?」
「ん?」
「切りすぎじゃない?」
「そ?オレは可愛いと思うけど?」

にこっと微笑まれて、その上可愛いなんて。心拍数がはね上がる。これ以上カカシの顔を見ていたらどうにかなってしまう!あたしは慌てて洗面所へ駆け込んだ。

「ちょ、ちょっと見てくる!」

真っ赤な顔で鏡に写るあたしの前髪は眉毛よりも上になっていたけれど、案外似合ってるかも、なんて思ったのは秘密だ。