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「今回の任務は多少の色仕掛けが必要になる。」

5代目の言葉にサクラが身を硬くしたのがわかった。彼女も、もう16歳。
幼い恋心をサスケに抱いていた頃から知っている教え子に色事任務が回ってくるというのは思っていたより複雑な心境だった。娘を嫁にやる父親の気持ちはこんな感じなんだろうかと世の男親たちの傷心に思いを馳せる。

「まあ、あたしも愛弟子を色事任務にやるほど鬼じゃない。それで、だ!助っ人を用意した。」

豪快に笑う5代目を見て心底ホッとした様子のサクラに安堵している自分も歳を取ったもんだと苦笑しつつも、5代目が言う助っ人とは一体誰なのかと思案を巡らせた。
5代目は俺を見て「腕も立つし、とびきりの美人だぞ」とニヤリと笑う。

「そろそろ来るはずなんだがなぁ。」

5代目が言い終えない内に火影室のドアが勢いよく開けられた。

「もう〜、5代目!人使いが荒すぎます!まだ引継ぎも終わってないのに〜!」

火影室に転がり込むように入って来たのは俺の後輩だった。最後に会ったのは、彼女に抱いてほしいと言われたあの日だ。

ぶつぶつと5代目に不満を言っていた彼女が急にくるりと振り返った。ふんわり揺れた髪からする甘い香りが鼻腔を掠める。

「お久しぶりです、はたけさん。」

にっこり笑って上目遣いに俺を見上げる名前はあの日よりも大人っぽくなった。
あの頃は無造作に束ねられていた少し癖のある髪は、胸元まで伸び、ゆるくパーマがかかっている。元々、整った顔立ちではあったが化粧っ気がなく幼かった顔には、くるんとカールした睫毛に挑発的なアイライン、そして薄く紅を差した唇は艶やかな色気を孕んでいる。

「あれ、はたけさんあたしのこと忘れちゃいました?」

名前の変化に呆気に取られて、言葉を返さないでいると、「ひどいな〜」なんて頬を膨らませている。
どうやら、名前の変わったところは外見だけではないらしい……

「いや〜、すっかり小悪魔になっちゃって…」

頭を掻いて、少し複雑な気持ちで笑うと名前は「大人になったでしょ? 」と満足気ににんまりした。

「カカシ先生と名前さんって知り合いなんですか?」

俺たちのやり取りを見ていたサクラが不思議しそうにしている。
そんなサクラに名前は「サクラちゃん久しぶり〜」と小さく手を振ると、サクラは遠慮がちに手を振り返し「お久しぶりです」と小さく笑って、名前に会釈をした。

そんな二人のやり取りに今度は俺が首をかしげることになった。

「なに、お前たちこそ知り合いだったの?」
「はい!色事任務演習の講師なんですよ名前さん。」

目を輝かせて「名前さん綺麗で可愛いくて腕も立つし、ユーモアもあって人気なんですよ〜」と話すサクラに名前は「煽ててもなんにもでないわよ?」と笑っている。

そういえば、最近5代目が色事任務演習の内容を見直すと言っていたが、まさかその講師に色事任務に失敗したと泣きついてきた10も歳の離れた暗部の後輩が抜擢されるなんて努々思いもしなかった。

「そうなんですよ〜、あたし特別上忍に異動になったんですよ、カ・カ・シ・先・生。」
「………お前ね、先生はやめなさい。」

わざとらしくサクラの真似をして俺のことを先生と呼んだ名前に渋面をしていると名前は悪戯を思い付いた子供のようににやっと笑うと、俺だけにしか聞こえないような声で言った。

「だって…ある意味、先生じゃないですか。」

その通りだ。
あの日、何も知らなかった名前の初めての男になったのは自分だ。けれど、行きずりの女と言うにはあまりにも近すぎたのだ。一晩過ごしたからといって恋慕を募らせるほど若くはないが、幾つになっても男というのは他の雄よりも優位に立ちたいと思ってしまうから滑稽だ。
可愛い後輩が自分の知らぬ間に大人になっていたことにつまらない独占欲が胸に巣食うのを感じた。