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「え、ちょ、服!服着て!はたけさん!」

バスタオルで頭をガシガシしながらお風呂場から出てきたはたけさんを見た途端開いた口が塞がらなくなった。上半身裸だし、その上、鍛えられた体と所々に残る古傷がセクシー過ぎたから!

「お前ね、こんな事で赤くなってちゃ、この後、どーするのよ。」

「……すみません。ひと思いにやっちゃってください……」

はたけさんはちょっぴり呆れたように言った。
あたしは恥ずかしさで顔を上げることができなくて、ベッドに三角座りをしたまま爪先をじっと見つめた。はたけさんのいう通りだ。この程度のことで赤くなっていては先になんて進めっこない……
意気地も性的な経験も乏しい自分が嫌になる。

「もー、髪もこんなに濡れたままだし。」

ぎしっとベッドが音を立ててはたけさんが隣に座る気配がする。あたしは顔を上げるのが怖くて、ぎゅっと膝を抱えた。

「ほら、こっち来なさい。乾かしてやるから。」

「!!!」

そう言うが早いかのうちに背中から抱き寄せられて、あたしははたけさんの両足の間にすっぽりと納められてしまった。
恋愛偏差値の低いあたしはここでもやっぱり、あわあわとぎこちない動きで声にならない声を出しては口をぱくぱくと動かした。

「くくく!」

はたけさんはどこから出したのかドライヤーを片手にちょっと噴き出したようにクツクツ笑っておもしろがっている。

「か、からかわないでくださいよ!」
「ごめん、ごめん。」
「変態…ロリコン…」

「初々しくて可愛いから、つい。」と余裕綽々すぎるはたけさんにむくれて悪態をつくと、はたけさんは「ロリコンはないでしょーよ、名前ちゃん……」と眉毛を下げた。

「変態は認めるんだ…」
「う〜ん、男はみんな変態だからね〜」

頭を掻きながら締まりなく笑うはたけさんはなんだか本当に巷の変態おやじと変わらないように思えてきてしまった。
というか、はたけさんってこんなに冗談言うんだ……

「……はたけさんってもっとクールで格好いいと思ってました。」

あたしが眉をひそめるとはたけさんは「傷つくなぁ〜」と首を竦めて笑う。

あたしは、はたけさんの足の間に収まったまま、大人しく髪を乾かしてもらった。ブォーンとドライヤーの音だけ部屋の中に響いている。

はたけさんの冗談のお陰かドライヤーの温風の心地よさのお陰か、あたしの緊張はさっきよりも随分落ち着いてきた。

「名前、本当にオレでいいの?」
「っ…!」

不意にドライヤーの音が止まって、それと同時にはたけさんに後ろからぎゅっと抱き締められる。そのままはたけさんはあたしの耳元に唇を寄せて、お腹に響くような甘い声で囁いた。
あたしは突然の事でびっくりしたのと、はたけさんが喋るたびに吐息が耳を掠めるのが堪らなくて、びくっと肩を揺らしてしまう。

「…っだ、大丈夫だから、耳元で喋らないでくださっ…あっ、い…!」

大丈夫と口にして間髪いれずに耳にふっと息を吹きかけられて、思わず上擦った声を上げてしまった。

恥ずかしさで顔が熱くなる。
恐る恐るはたけさんの顔を振り返ってみたら、辛くなったらすぐ言って、とにっこり笑っている。

やっぱり、はたけさんは優しくて素敵だと思っているうちにあたしの体は優しくベッドに押し倒された。

「これじゃ、脱がせないね。」

ちょっぴり困った顔で笑うはたけさんは胸の前でぎゅっと握り締めているあたしの拳をすっと撫でて、「はい、ばんざーい」と小さい子にするみたいにあたしの服を脱がせてくれた。

「…やっぱり恥ずかしいです。」

一糸纏わない姿にされて恥ずかしくて仕方ないあたしは必死にシーツを引き寄せた。はたけさんは「大丈夫、綺麗だよ」とあたしの頭を撫でた。それから「気が付かなくてごめん」と電気を消してくれた。

その後は自分でも見たことのないような場所を露にされて恥ずかしくて死んでしまうんじゃないかと思うほどだった。

そんな所を舐められたり、擦られたりされて嬌声を上げてしまっているということが恥ずかしくて、あたしは口に手を当てて必死に堪えようとした。

「あっ…!や、あ…!変な声でちゃっ…!」
「大丈夫、気持ちいいとみんなそーなっちゃうんだよ。」

はたけさんは優しくあたしの口から手を剥がしてそう言った。

あたしは初めて感じる感覚に戸惑っていたけれど、はたけさんに言われて自分が感じているんだと自覚させられて、それが余計にびくびくと体を反応させた。

「名前本当に後悔しない?」

少し荒い息をするはたけさんに最終確認されてあたしは静かに頷いた。
はたけさんはやっぱりちょっと困ったように笑って、汗でおでこに張りついたあたしの伸び切った前髪をすいてくれた。

「…っ!」

突然、下腹部に痛みに似たような熱を感じて思わず息を呑んだ。ぴりりとした感覚に頭のてっぺんから爪先までを貫かれたみたいだ。

「ごめんね、辛いだろうけど我慢してくれる。」

はたけさんはさっきよりも少しだけ苦しそうに笑った。
あたしは返事をする代わりにぎゅっとはたけさんの背中にしがみついた。