Keyresponse


「あら、何をしているのかしらこんな所で」
掛けられた声に落としていた視線を上げる
「えと・・・臨也のとこの」
「秘書の矢霧波江よ」
「どうも」
軽く会釈すると俺の姿をみて眉をひそめた
「中に入ればいいじゃない」
「いや、鳴らしたんすけど出なくて・・・」
「おかしいわね、いるはずなのだけど」
鍵を差し込み部屋番号を押してロックを解除する手元を見つめて
「何かしら?」
「いえ、何でもねぇっす」
声を掛けられて慌てて目線を逸らした
いくら職場とはいえ、自分のテリトリーに簡単に人を入れてる事に驚いた
あの臨也が、だ
こんな関係になったオレでも簡単に入れない、毎度向こうに迎えて貰わないと行けない場所へ繋がる鍵
それを直接臨也から預けられているこの女が、心底羨ましいと思う
並んで一緒にエレベーターに乗り込み、最上階へのボタンを押すと
扉が閉まって軽い浮遊感と共に動き出した
「そんなに欲しいならあげるわよ」
突然声を掛けられて動揺した俺の目の前にチャリと音を立てて鍵がぶら下げられる
思わず開きかけた手を強く握りこんでポケットに突っ込んだ
「いや、アイツに貰わなきゃ意味がねぇから・・・」
「それもそうね」
ふっと重力がかかったかと思うと目の前の扉が開く
「その言葉、直接あの男に言いなさい」
「え?」
一歩踏み出した所で中に残った女がそう言う
「案外鈍いわよ、自分の事に関しては」
言葉が終わると同時に扉は再び閉じられた
そんなに態度に出してたかと、気恥ずかしさに頭を掻きながら踵を返して最後の扉の前に立つ
少し前まではいともたやすく開いたそれは、今では重く静かに俺の前に立ち塞がる
壁に備え付けられたボタンを押せば、軽い電子音が響いた
間もなく内側から開かれた扉
「いらっしゃい」
ニヤついた笑みで迎えられ、中へ一歩踏み込む
扉の閉まる音を後ろに聞きながら、両頬に触れた熱に目を閉じた
「うわ、冷たいねぇ」
「誰のせいだと思ってやがる」
「ごめんごめん、ちょっと急ぎの仕事が入っちゃってさ」
触れてた熱が離れ、視界を塞いでいた色が取り払われる
「早く暖めてあげなきゃねぇ」
臨也は外したサングラスを畳んで俺の胸ポケットに押し込むと
そのまま伸びて冷えた唇を塞いでくる
両手で腰を引き寄せてさらに深く口づけ舌を差し入れると、咎めるように甘噛みされた
「なんだよ・・・」
「ここじゃ寒いでしょ」
そのまま腕を伸ばして扉の鍵をかけるとするりと俺の腕から抜け出て行く
誘われるようについて行った先でその身体を押し倒した時には、もう鍵の事など忘れてしまっていた








軽く身体を洗い流して戻って、真新しいシーツの上に眠る臨也の隣に潜りこみ
しっかり両腕に抱き込んで耳元に顔を寄せた
どうせ無駄に回る頭でロクでもない事考えてるんだろ
「いい加減、鍵寄越しやがれ」



閉ざされた二つの扉の鍵を




end
ROBOTさんサイト1万打お祝い小説
シズイザで静雄の焼きもちネタ
マンションの鍵を持ってる波江さんに嫉妬する静雄の話
静雄から自分への気持ちがどのくらいか不安で確かめる為にツン過剰になる臨也と
だからテメェ以外眼中にねぇよいい加減わかれよって言葉には出さないけど態度で出す静雄なシズイザが好きです。
サイト開設おめでとう!そしてコレ書いてる間にもう2万いってて凄いなぁと
大変遅くなりましたが貰ってやってください。


おまけ
「何故あの男に鍵を渡さないの」
「暴れた時に落とされても困るし、待たせることで冷えた身体を暖めるっていう口実もできるからね」
「折原臨也ともあろう者が随分弱気なのね」
「おやぁ、今日はずいぶん突っかかるじゃない?」
「あんな嫉妬深い目で見られて気分が悪いだけよ」
「嫉妬?誰が、誰に?」
「呆れた、あの男に同情するわ」
「え?ちょっと待って、今のどういう意味・・・」
「そのくらい自分で考えなさい」

引き出しに仕舞われた鍵の行方はいかに...

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