2.

 横たわった静雄は、臨也の両脚を自分の側に引き寄せて体を跨がせた。下肢のボクサーだけ脱いだ臨也の臀部が目の前にある。両脚のラインをなぞると僅かに腰が揺れた。
「う、あ、」
 ちょうど顔の上に来る彼の性器はゆるゆると形を持って勃ちあがっている。皮膚よりも少し淡い色をしたそれを、かわいい、と思う。ぐりっ、と舌で先端の穴を弄るとじわっと先走りが滲んだ。
「シズ、ちゃん、」
 焦ったような声に静止されるのすら心地いい。
「何だよ」
「俺、ばっか、ずるい」
 臨也はすり、と静雄のジャージに顔を寄せ、布越しに硬くなった性器に頬擦りをしてきた。
「カッタいね・・・相変わらず、でかいし・・・」
「て・・・っめ、」
「いいから・・・俺も、してあげる」
 緑のジャージをずり下ろして、中から性器を取り出す手が細い。ちろり、と見せ付けるように下唇を赤い舌が這い回る。
「こら・・・でかく、すんな・・・」
 シズちゃんわかりやすすぎ、少しだけ笑って、臨也は静雄の性器をぱくりとくわえ込んだ。
「う・・・・・っ、」
 生ぬるい感触、口の中の温かさ。すぐにでもイってしまいたいのを懸命にこらえて、仕返し代わりに自分でも彼の性器をくわえ込む。熱に浮かされた頭の中で、ぼんやりと、ああこれ69って言うんだっけかと思った。アダルトビデオやエロ漫画でくらいしか見たことのないような体位を、よりにもよって臨也相手に。
 いや、それ以前に、彼と今こうして近くで、互いの鼓動の聞こえる距離で触れ合っているという事実が繰り返し静雄の胸を揺さぶる。
 おれは、たぶん、おまえしか、
 小さく引き締まった尻を両手で掴んで割り開く。ふる、と揺らめく性器を右の人差し指と中指で愛撫する。次々溢れ出てくる先走りを指に絡めて、割り開いた双丘の奥の小さな蕾に突っ込んだ。
「うぁっ!ひっ、ん、あ・・・っ!!」
 全身を震わせて明らかな快感に満ちた悲鳴を上げる臨也の震える性器をもう一度くわえ込んで幹に舌を押し付ける。我ながら上手くなったと思う。初めてフェラをしたときは、彼を傷つけるのではないかという恐怖で口に入れるのすら怖かったのに。
「そっち、止まってんぞ・・・!」
 ぐりっと自分の性器を臨也の唇に押し付けると、臨也がわずかに振り返って喘いだ。赤らんだ表情と、潤んだ目と、快感に歪められた眉。ぞくっ、と背筋に疼きが走る。
 ぐちゃり、わざと音を立てて彼の内部をかき回し、先走りに濡れた下の毛を左の指で梳く。水音がたまらなくいやらしい、呼吸が荒くなるのを感じた。
 静雄は臨也と抱き合うまで誰ともセックスをしたことがなかった。慣らし方もフェラのやり方も、それどころか突っ込む場所や手順さえすべて臨也に教えられたのだ。彼しか知らない、それでいいと思う自分の感情の名前も彼の本心もわからないままに、何度も何度も体だけ繰り返して、悩みに悩んでやっとここまでたどりついた。
 おまえしか、いらない。
「・・・臨也、」
 小さく呟く。静雄の性器を唇で懸命に愛撫する彼に聞こえているかどうかはわからない。聞こえていなくてもかまわないと思った。
 互いの感情を確かめ合ってから、時折ぽつんと二人の間に落ちる言葉。口にするのはいつも静雄のほうだ、先に手を伸ばしたのも結局は静雄だった。
 欲しい、などと今更口にはしない。だから、代わりに確かめるような言葉を繰り返す。
「・・・すきだ」
 びくん、と頭上の細い腰が跳ねるのがわかった。
「こっち、向け」
「・・・う、ん」
 体を起こし、臨也を膝の上に引き上げる。振り向かせてキスをした。掠めるようなそれに物足りなさを感じ、抱き上げて体の向きを変えさせる。視線が合う。血のような色をした瞳と、彼のかすれる声が聞こえた。
「シズちゃん、」
 名前を呼ばれたのが先か、唇を重ねたのが先かわからなくなるほど近い場所で彼の匂いがする。どうしようもない衝動が落ち着いて穏やかに二人でいられるようになるまで、あとどのくらいの時間をすごせばいいのだろう。
 感情のままに繰り返す貪るようなキスはひどく甘かった。この体がいつまでも腕の中にあればいいと思った。

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