「聞いてくれ!今日は話しかけることができた!」
「おお!よかったね!」
「タオルを落としたので、拾って、渡した」
「えっ、それ、それさ〜〜〜……」
話したっていうの?わたしの不満そうなかおを見て、東堂が気まずさを露わにした。自分でも分かってるわけね。
今日も今日とて、進展はないらしい。
「俺にとっては、すばらしい進展だぞ」
「いや、それじゃただの親切な通行人だよ!」
「厳しいな……」
「事実でしょ!」
東堂におごってもらったコロッケを食べながら、鋭い視線を向ける。もっとこう……あるだろ!なんかあるだろ!なぜこうも上手くいかないんだ。
「よっ、今日は尽八と昼飯なんだな」
「ああ、新開くん」
「邪魔するな、隼人!俺たちは今会議中だぞ」
これはチャンスだ。東堂の好きな女の子は新開くんのファン。それに、彼女と新開くんはそこそこ交流があったはず。何か有益な情報が得られるかもしれない。というか、あの子が新開くんのファンではなく、恋人志望の恋愛ガチ勢かもしれないのが、問題だ。東堂はそこらへんを深く突っ込めない。ほんとダメダメだな。よし、ここは思い切ってわたしが言ってみよう。
東堂を目で制して、新開くんに笑顔を向ける。
「新開くんのファンの子いるじゃん、ほら、この前パウンドケーキあげてた子」
「!」
東堂が、マジかお前!みたいな顔でこっちを見る。あんたのペースで行ってたら、あっという間に私たち卒業しちゃうわ!恋愛は先手必勝。これ基本!もう全然先手じゃないけどさあ!
新開くんは少し考えた後、うなづいた。このモテ男はいろんな女子から頻繁に食べ物の差し入れを受け取っているらしい。羨ましいこって。
「ああ、もらったな。美味かったよ」
「あの子なんか言ってたりとか、ない?」
「昨日、」
「うん」
「告白されたよ」
「!?」
「!?」
きゅ、急展開すぎる!
20141229