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なぜかはよくわからないけ ど、わたしはよくいじめられる。ただ歩いていたり、本をよんでいたりしただけなのに、なぜだかからまれてしまう。
おそらく、わたしがキュートすぎるのがいけないのだとおもう。かわいいは罪だとママもいっていた。
「だから、べつにぜんぜんかなしくない」
「バカだな、おまえ」
このしつれいな男はクロオ。わたしがいじめられているときに、よくたすけてくれる。ついでにいうと、ケンマという男がいじめられているときも、よくたすけている。
弱いものいじめをゆるさない、せいぎかんあふれる男である。ただ、デリカシーはあまりない。
「そんなんだからともだちいないんだよ」
「何をいっているのかきこえません」
「耳ふさぐな、おい!」
かわいいわたしがねたまれるのはしかたのないこと。ともだちなんていなくたってへっちゃらなのです。クロオはいつもききたくないことばかりいってくる。
そんなにいうなら、ほっとけばいいのに、わたしのことなんか。


「そんなんだから友達いねえんだよ」
黒尾の小言はうるさい。ことあるごとに友達友達って、そんなに友達が大事なら私なんてほっとけばいいのに。
「私、耳が遠くなったみたい…」
「いつもそれだな、もっとネタ増やせよ」
黒尾とのこのやりとりはもはや様式美のようになりつつある。研磨がため息をつくまでが一連の流れである。友達が少ない私と、同じく友達が少ない研磨、友達が多い黒尾。絵に描いたような幼馴染だ。
「お前ほんとそんなんで大丈夫か?女子にいじめられてねーか?」
「僻まれてはいる。私が可愛いから」
「いや、ぜってーその謎の自信が原因だろ」
謎ではない。誰がどう見ても私は可愛い。こんな美少女が他にいるだろうか?いや、いない。研磨は私を冷たい目で見ているが、友達の数に関してはどっこいどっこいだ。
「確かに私には友達はいない。でも、チヤホヤしてくれる男はたくさんいる」
「いい加減ハーレムやめなよ…みっともないから…」
失礼な。


「ほんとさみしーオンナだな!」
「いっつもひとりぼっちじゃん!」
うるさい、うるさい。ひとりぼっちで何がわるい。わたしは好きでこうしているんだ、おまえらには関係ないだろう。
わたしのかわいさをひがんで、からかってくるやつは、ようちなんだとママもいっていた。
ひとりぼっちだって、さみしくなんかない。
「おい、パンツみせろよ!」
「ことわる」
「めくっちゃおーぜ!」
「ことわる」
なんで男はみんな、パンツをみたがるんだろう。きもちわるい。ていうか、ひとりぼっちとパンツに何のいんがかんけいがあるのだ。ただパンツみたいだけだろ、こいつら。
「やめろよ」
「……クロオ」
こういうとき、クロオはいつもすごいタイミングであらわれる。まるで、仮面ライダーみたいだ。ごつごうしゅぎてき。
かっこいいような気がした。すくなくとも、わたしを好きだという男やパンツをみせろとせまってくる男よりは。
「パンツなら、オレが見せてやる」
うわ、だいなし。


「体育で、二人組作って!の制度は恥辱罪に値する。即刻撤廃を要求したい」
「ぼっちにはキツいわな」
一言余計な黒尾を睨みつける。お前には分かるまい。この恥ずかしさが。別に友達がいないのはもういい。慣れた。しかし、他人に友達がいないと思われるのは嫌だ。あー、あの人友達いないんだ、かわいそう……と思われることが心底嫌だ。
「俺がお前と同学年だったら組んでやれるんだけどな」
「それは嫌、気持ち悪い」
「文句あんのか、オラ」
「それに私と組みたい男子なら五万といる」
「…それたぶん自意識過剰だぞ」
黒尾と同学年は困る。今はいいとしても、小さい頃、黒尾が私や研磨をかばってばかりいた頃は、だめだ。相手が年下で黒尾がちょっとデカめだったから、なんとか彼がボコボコにされるような事態は避けられてきたが、もし同学年だったら、どうなっていたかは分からない。
別に助けてなんて頼んだ覚えはないが、私が原因で怪我をされるのは後味が悪い。だから、年齢差はこれでいいのだ。
「別に一人でも耐えられる。というか同学年に黒尾はいらない。ウザい」
「可愛げが0だな」
「私は可愛い。こんなに可愛い女子は宇宙規模でもなかなかいな…」
「うるさいんだけど」
「研磨の方が可愛げがない」
私がいじめられたら、きっとまた黒尾は助けに来る。言わなくても求めなくても、勝手に助けようとしてくる。だから、安心して私は私で居られる。まあ黒尾がいようがいまいが私は私だが。
もうずっと前に、自分のパンツを犠牲にする覚悟で私を男子数名から助けたように。今でもあの時のことは思い出せる。幼い黒尾のドヤ顔と、その他のドン引き顔は一生忘れないと思う。
忘れたくても忘れられるか、あんなエピソード。死ぬまで笑い話にしてやろう。

20141119
ほかよりすこしはおきにいりで