さいきんの彼女は、どうやら真名部君が気になるようで、やたらと彼にちょっかいをかけては怒鳴られている。
これは、わたし、空野葵のマネージャーとしての観察眼と乙女としての洞察力からくる確信的事実である。
おそらく彼女は真名部君が好きなのだろうけれど、表現が下手なので今日も今日とてこの調子である。


「真名部くん!」
「来ないでください!」

さいきんの真名部君はマネージャーのひとりでありもっともよくわからない人物として名高い彼女に追われて、とても忙しそうだ。
これは、ボク、皆帆和人が趣味の人間観察と特技の推理で見出したひとつの可能性なのだけれど、真名部君はおそらく彼女に好意を抱いている。
パッと見た感じ彼女が一方的に彼を追いかけ回しているように見えるが、実は真名部君も満更ではないことをボクは知っている。
素直とは言い当て難い性格を持った彼が本心を伝えるには彼女はあまりにハードルが高すぎる。かくして、今日も二人は仲良く追いかけっこを繰り返すのだ。


「ちょ、返してください!」
「真名部くん目悪いねー、これ度いくつ?」
「いいから返しなさい!」

さいきん、マネージャーの一人が騒がしい。これはもともとの性格もあるのかも知れないが、とにかく真名部にからんでは元気に走り回っている。
オレ、剣城京介はそんなヤツらを見ながら内心、気が気ではない。隣で無言で空を睨む神童さんは、今にもブチ切れそうだ。
先日の、九坂による森村への突然の告白でどことなく甘ったるい空気が流れているところにこいつらのじゃれあい。こっちの身にもなってほしい。


「あ、やば、手がすべった」
「ちょっと、なに人のメガネ投げてるんですか!?」
「手がすべったんだって!投げてないって!あ、鉄角それとってー!」

メガネが空中で舞うのを見ながら、この二人はいつ付き合うのか、ととてつもなくどうでもいいことを考えた。破局すればいい。
オレ、神童拓人は正直こいつらのサッカーとは関係ないことで騒ぎ立てるところが死ぬほど嫌だった。何なんだこいつら。何しに来てんだ。
雷門に帰りたい。霧野に会いたい。


「ナイスパース!さすが鉄角!」
「壊れるでしょうが!」
「真名部くんそんなに怒ったら血圧が…」
「だ、れ、の、せ、い、で、す、か!」
「怒った顔もかわいいぜ!」
「あああああ!!」

きょうも、イナズマジャパンはへいわです。

20130731
…サッカーしようぜ!