himitsuのおまけの小話です。

「うーん」
「何読んでるの?」
「ファッション誌です」
鬼のような顔で雑誌を読む彼女。ファッション誌は読んだことはないけれど、そんなに怖い顔で読むものなのだろうか。
「勉強しようと思って」
「そうなんだ」
こくりと頷く彼女はずいぶん真剣だ。
「私ってちんちくりんでしょう」
「……そう?」
「そうなんです」
「気付かなかった」
「降谷君はにぶいですからね」
仕方ないです、とそんなことを言う彼女も大概にぶい。自分のことを棚に上げてるな。
「少しでも垢抜けないと……」
「誰かに何か言われたの?」
「まあ……」
彼女を悩ませるなんて、なんてひどいやつ。散々悩ませて泣かせている僕が言える立場でもないのだけれど、彼女を傷付ける人を許せはしない。
「私は降谷君とお似合いだねって言われたいんです」
「お似合いだよ」
「他の人にもそう思われたいんです!」
「僕じゃダメなの?」
「こればっかりは……」
僕じゃダメというなら仕方ない。僕はそう言うのはあまり気にならないけれど、彼女と僕は違う人間だ。違う考え方なのが普通である。
「降谷君の趣味がヘンだと思われたら嫌じゃないですか」
「僕は気にしない」
「私は気にします。……まあ降谷君の趣味がヘンなのは事実ですけど」
そんなことはない。
「降谷君の隣にいても違和感のない女性になりたいんです」
「ふーん……」
違和感なんて、感じたことないけど。彼女が言うなら本当に、少し、にぶい僕が気付かないくらいのものがあったのかも。
「じゃあ僕も、一緒に勉強するよ」
「ほんとですか」
途中で寝たら、怒るかな。


「君には多分……えっと、リボンとかが似合うよ」
「さてはテキトーに言ってますね!」


20171115
みちたりた化身