「土曜部活午前中しかないんでしょ?」
「何で知ってんの」
「倉持君から聞いた!」
「へえ」
「私も休みなの、レッスン」
「へえ」
「デートしようよ」
「へえ、え?」
「いやーバッティングセンターって一度来てみたかったんだよね!」
「へえ」
「一緒に行ってくれる人ってなかなかいないし、一人じゃちょっと入りづらくて」
「へえ」
「御幸ならこういうとこ慣れてると思って……え、何か不服?」
「休み返上で、学校で出来ることをわざわざ金払ってやるとか…….」
「野球部の設備すごい。まあ私とのデート代だと思ってよ」
「むしろ俺が払ってほしいくらいなんだけど」
「ちょっと何言ってるか分かんない」
備え付けのバットを持つ。なんだこの手袋……した方がいいの?
「御幸これ……」
「うん、つけて」
「こんなのつけるんだね」
「滑り止めみたいなもんだよ、お前試合見に来てんじゃねえの?」
「一回だけ」
「一回かよ」
「バット触るのも初めてです!」
「おいおいちょっと待て、そこ120qだぞ」
「うん」
「うんじゃない、80qにしなさい」
「え、速い方がいいんだけど……」
「調子乗んなよ初心者」
「大丈夫、行ける」
「何の自信なんだよ、やめとけって…おい」
もうお金入れちゃった。
「わー、ドキドキする」
「どうなっても知らねーぞ。つーかすげえフォームだな、それで打てんの?」
「打て………ない!速い!」
「だろうな!」
「うわ!?怖い!」
「だから言っただろ!本当お前バカだな!」
「わわわ!ムリ!怖い怖い怖い!」
「おい、あぶねーから動くな!構えてろ!」
「むずかしかった……」
「人の話聞けよ、お前まじで」
「反省した……」
「怪我しそうで見てる方がビビったわ」
「ごめん。…御幸やらないの?」
「やった方がいい?」
「せっかくならかっこいいとこ見せてよ」
「いや〜みょうじに惚れられたら困るしな〜」
「そこは安心してもらって大丈夫」