まっすぐひねくれる | ナノ
お昼休みになったけど、腹痛で保健室に行った御幸が帰ってこない。
「….倉持君」
「んだよ」
「保健室行く予定ない?」
「はあ?」
御幸のかばんは教室に置きっぱだから、たぶんまだ保健室にいると思う。あいつ弁当もこの中に入れてるだろ。
「御幸のかばん持っててあげてよ」
「なんで俺が」
「友達でしょ?」
「ちげーよ、キメェ」
「そんなこと言わずに」
「いやみょうじが行けよ」
「私も友達じゃないから」
「じゃあほっとけば」
「…意地が悪いことを言うね、倉持君」
ほっとけないから、こうして倉持君に声かけたんだけど。
「心配なら自分で行け」
「…だって御幸のかばん重いし」
「どんな言い訳だよ」
「倉持君が行った方が喜ぶと思う」
「キメェ」
「そう言わずに」
「俺よりお前のがいいに決まってんだろ、バカか」
「それこそキモいでしょ!」
「何でだよ」
「な、なんでって」
「とにかく俺は行かねえ。オメェが行け。以上」
「ええ!?はくじょうもの!倉持君のはくじょうもの!」
「ウルセーウルセー」


何で私がこんなことをしてるんだろう。
「し、失礼しまーす……」
保健室の扉を開く。だ、誰もいない?
「御幸?」
腹痛で搬送されたか?いやでも、救急車のサイレンとか聞こえなかったしな…。もしかしてカバン忘れて帰ったとか…。色々考えながらベッドの方を覗く。
「…寝てるし」
御幸が寝てた。メガネなし。顔色はそんな悪くないな。腹痛は治ったのだろうか。
「いや、起きてる」
「うわあ!?起きてるんかい!」
「みょうじがうるせーから起きた」
「そんなうるさくしてないだろ!」
「いやうるせーよ。ていうか何してんのお前」
「カバンを届けに来た」
「俺の?」
「…他に誰がいんの?」
急に目を開けた御幸に驚きながら、重たいカバンを床に下ろす。全然元気そうじゃねーか。
「ふーん、サンキュ」
「うん、重たかった」
「わざわざ心配して保健室まで来てくれるとか、やっさしー」
「でしょ?もっと褒め称えて」
「そんなに俺、お前に愛されてるとは思わなかった」
「…そういうのは求めてない」
「はっはっは」
「お腹もう痛くないの?」
「今は腹より眠気だな」
「やっぱ気のせいだったんだよ」
「ちげーよ。まじで痛かったんだって」
「へえ〜」
「何で信じないんだよ」
「別に信じてないとは言ってないし」
「目がそう言ってます〜」
メガネかけてないんだから、たいして見えてないくせに何言ってんだか。
「じゃ、私戻る。お大事に」
「もう戻んの?まだ昼休みあんだろ」
「お昼まだ食べてないの、御幸のせいで!」
「俺のために、の間違いじゃねーの?」
「引き留めんな、ウッザ」
「うわ、弱ってるヤツにそういうこと言う?サイテ〜」
「勝手に衰弱して」
「…もっと俺に優しくしろ」
「え?いや普段の自分の態度を省みて?」
「今だけでいいから〜…」
「…うざいなー、やっぱ倉持君に行ってもらうんだった」
「みょうじ〜…」
「うるさい、呼ぶな、ばか、寝ろ!」
私はお前の母ちゃんか!