朝早く目が覚めてしまった。
「……別に、寂しいとかじゃないけど」
国際電話って高いんだっけ。まあいいか。
スマホをスライドして、番号を呼び出す。案外早く、つながった。
『もしもし……』
「もしもし、みょうじですけど」
『お前……もう俺寝るんだけど』
「冷たいな!友達じゃん、ちょっとくらい付き合ってよ御幸!」
時差、8時間くらいだっけ。
『何、ホームシック?早いな』
「違うけど…まあ違くないのかな」
『…テンション低いな』
「だって聞いてよ、もうピアノ触ってるか演奏会か訳わかんないパーティーに出るしかしてないんだよ」
『へえ〜〜』
「無関心を隠す努力をしろ」
『いや、だって想像つかねーし』
「想像力を働かせて〜」
『つーか、なんで俺に電話してくんの』
「……」
『みょうじさんは御幸君が恋しいんですか〜?』
「ウッザ」
『切るぞ』
「ごめん」
『めんどくせーな、お前』
「ごめん、めんどくさくて。でも切らないで、喋ってて」
『…大丈夫か?』
気遣うような御幸の声が、なんだか胸に沁みた。
「御幸の声って安心する」
『気持ち悪っ』
「たとえ言ってることは最低でもな」
『…早く帰ってこいよ』
「日程は変えられない」
『土産楽しみにしてる』
「だからそんな時間ないんだって」
『空港でいいよ。一番たっけーやつな』
「図々しい!」
クスクス笑うと、御幸も電話口でいつものように豪快に笑った。なんか、癒されるな〜。あ、やばい、私疲れて頭おかしくなってる。
『しょぼくれてるみょうじなんて需要ないだろ、とりあえず笑っとけ』
「何それ」
『笑ってれば、大抵のことは何とかなる』
「経験論?」
『まあな』
「…まあ、参考にはするよ。もう寝るんでしょ。切る」
『もういいのか?』
「うん、おやすみ。……ありがと」
『はっはっは、素直なみょうじとか怖いな』
「うるっさい、おやすみ!」
『おやすみ〜』
あっさり切れた。