まっすぐひねくれる | ナノ
やって参りました、オーストリア。
「もう帰りたい……」
「早いですよ」
「小林さん……だって演奏会と練習しかしてないですよ!せっかくの海外なのに!」
運転手をしてくれてる小林さん出張版である。この人ほんと何でもしてくれるな。仕事とはいえ。
「そういう留学ですからね」
「せっかくウィーンにいるのに……ショッピングとかしたいよ〜」
「無理ですね、日程的に」
「私に体力がもっとあれば……」
「でも日本にいる時よりピアノ弾いてますし、緊張感もありますから。仕方ないです」
「小林さん何とかできません?」
「私が怒られるんで無理です」
「…ですよね〜」
なんか演奏会聴いて、出て、知らない外国人のおっさんと会ったり、なんかパーティー的なものに出たり。そりゃあ音楽留学だから、音楽漬けなのは当たり前だけど、もっと自由な時間もあったっていいんじゃないの!?
「ていうか、もうヒールやだ、足疲れた…」
「がんばってください」
「演奏会とかは分かる。でもパーティーとか、あれ何ですか?何のパーティーですか?」
「外国人ってパーティー好きですよね」
「私は好きじゃないです」
「私もです」
「サボります?」
「私が怒られるんで、無理です」
「ですよね〜」
たぶんお父さんの仕事の関係とか、音楽業界の偉い人とのとか、何か分からないけど、華やかなパーティー。外国ってすげえ。超疲れる。
「でも、かなり印象いいみたいですよ」
「え?」
「大体の人が褒めてくれてます。気持ちが弾む音だって」
「うふふ」
「まあ酷評の人もいますけど。評価が極端なんですよね」
「う……まあ楽譜無視して弾いてるとこたまにあるから…問題はわかってます…」
だって気持ちが乗ると、ちょっと暴走してしまうというか何というか。抑えなきゃいけないのはわかってるんだけどなあ。
「がんばってください」
「…はあい」