「はーあ、寒い。今日も寒い」
「おーっす、頭ボサボサだな〜」
「自転車で来たからね」
「お疲れ」
「ほんと寮が羨ましい……手冷たい…耳痛い…」
「うわっマジだ」
「耳触んな…えっ、あったか…」
「俺グローブしてたから」
「大丈夫?手洗った?臭くないよね?」
「失礼なやつだな」
耳当てのように手のひらで包まれた耳が暖かい。人間カイロである。
「あったかーい…いいな、私ほんと冷え性だから」
「犬っぽいくせにな」
「はあ?どこが?どこが犬?どっちかっていうと子猫ちゃんでしょーが」
「子猫ちゃん(笑)」
「(笑)をつけるな!」
ふんっと言いながら、御幸の手を耳から引きばかす。今更だけど、大胆なボディタッチだな!
「あっためてやろーか、俺が」
「結構。御幸にあっためてもらうくらいなら、レンジでチンしてもらうわ」
「死ぬぞ」
「マジレスやめて」
「つーか、指先冷やすのやめろよ。動かなくなったらどうすんだ」
「うわ、先生みたいなこと言ってる」
「ちゃんと動かなかったら弾けねーだろ、ピアノ」
「…うん、まあ」
今度は指先を御幸の手でつかまれる。あったかい。
「わけてやるよ」
「それはありがたいけど……おいムニムニするな!」
「女子の手ってあんま触れねーから、こういう時触っとかねーと」
「ちょっとは遠慮しろ!」