まっすぐひねくれる | ナノ
音楽室のピアノが好きだ。手入れが完璧とは言えないけれど、このピアノじゃないと出せない音がある。
「上手いものだな」
「!?ふおっ」
「ああ…すまない。急に声をかけてしまって」
「いっ、いいえ!」
一息おいていたら、声をかけられた。びっくりして、声の方を見ると、紳士そうなというか、もはや紳士そのものな感じの男性が立っていた。
「いい音だ」
「あり、ありがとうございます!!!」
微笑を浮かべて去っていった。声ちっさ!でもすごいイケメンだった!
「せ、先生!」
「…ん、あ、何?寝てた」
「寝てんじゃねーよつっかえねーな!!!!」
「何だとお!?反省文書くかオラァ!?」
「今の人、誰だったんだろう……」
「知らねーよ寝てたからな」
「クソ!!!」
「クソとか言うんじゃない!」
「オールバックで、やさしそうで、背が高くて、声が小さい人!知ってますか!?」
「は?誰だそれ……ん、ちょっと待てよ…」
「先輩っぽかったです。紳士オーラ全開でした」
「なんかそんなやついた気がする……」
「思い出して!思い出して!先生!」
「ちょっと黙ってて、うるせえ」
かっこよかったなあ。
「ていうか、何でそんな興奮してるんだ?恋か?」
「そうかもしれない」
「ほお」
「好きになってしまったかもしれない!」
「ほお」
「なんか胸がキュンキュンします!」
「ほお」
「ちょっと、もっと興味持てよ!ていうか思い出しました!?」