「御幸、歌って」
「は?嫌だよ」
「え〜〜〜ケチ〜〜〜」
「駄々こねんな。つーかなんで急に歌?」
「いや、御幸っていい声してるなって思って」
「まあな」
「ウザ。だから、歌ったらいい感じになるのかな、と。音痴だったらそれはそれで面白いし」
「面白いってなんだ」
御幸の声は、声だけ聞けば、かなり素敵なものだと思う。優しそうで甘そうな感じ。実際は優しくも甘くもないけど。
「みょうじは俺の声が好きなんだ〜」
「好きっていうか……きれいな声だなって思うけど」
「…お、おう、なんか真っ正面から言われると照れるな」
「なんかそれっぽいセリフ喋ってよ」
「たとえば?」
「…うーーん…何だろう…お前しか見えない…とか?」
「は?やだよ、こっぱずかしい」
「は?これくらい言えよ。私が聞きたいって言ってんだぞ」
「何様?」
「でもよく考えてみたら寒いな。やっぱ言わなくていいや」
「腹立つなお前本当…」
御幸に言われても微妙だし、そもそも御幸一也はそんなクサイ台詞は言わない。……いやいや、何で私が御幸に言われる前提なんだ。おかしいだろ。
「みょうじは…私のことはいい!ここは任せて早く行け!とかが似合うな。ちょっと言ってみろよ」
「嫌だよ!どこの洋画のおっさんだよ!」
「はっはっはっ!」