まっすぐひねくれる | ナノ
「たぬき!たぬき見たの!今日」
「お、おう…テンションたけえな」
「自転車で走ってたらね、雑木林のとこで。猫かなって思ったんだけど、うしろにいたおじいさんが狸だ!って叫んで」
「えっ、本当にいんの狸」
「うちの家、相当田舎だから」
「自転車通学だろ?」
「片道一時間」
「は?」
「本当だよ」
「バス使えよ」
「めんどくさい」
「いや、自転車のほうが疲れるだろ」
あのバスの静かにしなきゃいけない空間とか、お年寄りに席譲ろうか迷うあの瞬間とか、逆に疲れるんだもの。
「週4で車送迎だし」
「セレブ?」
「オホホホホ、ピアノのレッスンがあるので」
「うっぜ〜」
「はーあ、私も本当は寮が良かったんだけどなあ」
「相部屋はうるせーぞ?」
「楽しそうじゃん」
「まあお前は楽しむタイプだよな」
「うん」
「つーかなんで寮はダメ?」
「おとーさんが心配するから」
「へえ」
「過保護なんだよ〜仕事で忙しくて全然帰ってこないくせに」
「うちの親父と全然ちげーわ」
「こんな可愛く才能溢れた一人娘だから、心配するのもわかるけど」
「真顔でよく言うな」