まっすぐひねくれる | ナノ
「コンクールまであと僅かだけど、演奏は相変わらずクソだな」
「クソ!?この前まで微妙っつってなかった!?」
「どうすんだよ、課題曲だぞこれ」
「う〜〜〜どうしよう〜〜〜」
「恋はできそうもない?」
「なんかもう無理な気がします」
「見事に枯れてるな……」
「これから!これから咲くんです!」
「孤独死まっしぐらだぞ、大丈夫か?」
「何の心配ですか、話を大きくしないでください」
相変わらずのぎこちない音。恋なんてできそうもないし、したとしてもそれが演奏に生きてくるか分からない。コンクールまでは残りわずか。どうしろと。
「技術は申し分ないんだけどな」
「そうですかね」
「問題は心のほうだ」
「…はい」
「この曲がどんな曲だか知ってるな?」
「…はい」
「俺が恋しろっつった理由もわかるな?」
「…はい」
「分かるならよし、もがけ少女よ」
嫌な大人だな、マジで。ニヤニヤした顔に腹が立つ。
「クソハゲ……」
「何だとお前今何つった?」
「何も」