まっすぐひねくれる | ナノ
「見て見て、御幸」
「くっだらねー」
「せめて見てから言って」
「はいはい、で?」
「御幸の寝顔」
「消せ」
「これすごいイケメンに撮れてるじゃん?」
「そうだな、消せ」
「従姉妹のお姉ちゃんが売って欲しいって言ってるんだけど、いい?」
「ダメに決まってんだろ、何言ってんのお前」
無断で売るのもどうかと思い、きちんと申告したのに断られた。肖像権の侵害は罰せられる恐れがある。それは困る。
従姉妹のお姉ちゃんは御幸のファンである。青道のイケメンキャッチャーのプライベート写真を高く買ってくれるというのだ。
「よく撮れてるのに?」
「関係ねえよ、知らない奴が自分の写真持ってるとかこえーだろ」
「……そうかなあ」
「そうだよ」
「私はそう思わないけど、御幸がそう思うならやめとく」
「おう」
「じゃあ御幸がこのデータ買う?」
「いや何でだよ」
「御幸がこの写真を500円で買い、私はこのデータを削除する」
「いらねえよ……自分の寝顔」
まあ確かにそうかも、と頷く。私でも自分の写真はいらない。しかも寝顔。
「待ち受けにでもしとけば?」
「やだよ、バカップルみたいじゃん」
「はっはっは、鳥肌立ったわ」
「でも一応消さないでおく」
「は?何で」
「将来、御幸が出世してプロになった時に高値で売るためだよ」
「最低だな〜」
その時は500円なんてみみっちい金額ではなく、万単位の価値になっているはずだ。それまでは保管させてもらう。
「あ、私の写真も撮っていいよ」
「 ひたすらいらねえ」