「あの、落としましたよ」
「あ、どうも」
「いえ」
「あ」
「?」
「前に御幸に会いに来てた…」
「あ、あの時のセンパイ…」
「ごめんなさい、何ていう名前だったっけ?」
「降谷です」
「そうだ降谷!降谷君!」
私の落としたカイロを拾ってくれたのは、いつかの一年生トリオ無口担当降谷君だった。
「カイロ拾ってくれてありがとう」
「いいえ」
「じゃあ、私、行くね」
「はい」
「……」
「……」
「……降谷君」
「はい」
「何でついてくるの?」
「こっちに用があるんです」
「あ、そうなんだ…なんかごめん」
なんだこれ気まずい。そもそも私は降谷君がどんな子なのか全然知らない。ラジオで聞いてたから、ピッチャーなのは知ってる。怪物くんなのは知ってる。でもこんな無口な不思議系だったとは知らなかった。言ってなかったじゃん実況の人!
「み、御幸とはどんな感じですか。いじめられませんか?」
「…大丈夫です」
「そう…」
「でも、たまに、性格が悪いなと思います」
「そう……」
性格悪いと思われてますよ、御幸さん。
「あの、隣歩いてもいいですか」
「う、うん。どうぞ」
「ありがとうございます」
「いえいえ」
「……」
「…降谷君、大きいね、身長」
「センパイは、小さいです」
「あ、はい…」
どうしよう気まずい。