まっすぐひねくれる | ナノ
御幸一也は友達がすくない。
なぜなら、積極的に人と関わることをしないからである。ほぼ野球のことしか考えてないから、クラスメイトとの関係はそんなに大切ではないらしい。なんかまあ、御幸がそれでいいならいいけどさあ、って感じだ。

「みょうじ、爪切りもってねえ?」
「あー、あるよ。待って…カバンの中…あれ、ちょっと待って…見つからない…」
「整理整頓しろよ」
私はクラスメイトの女子の中ではわりと御幸と関わる方だ。たまたま席が隣だった関係で日常会話くらいはする仲になった。よく羨ましがられるけど、そんなに騒ぐものでもないとおもう。御幸は決して”イイヤツ”ではない。
「あったあった、ほい」
「ゴツいな、女子の持ってる爪切りかよ。ていうか百均のだろコレ」
「人から借りた爪切りにそこまで文句言えるとか逆にすごいわ」
「あとで返す」
「足の爪は切らないでね」
「はっはっはっ」
「え、なんで笑うの?おいマジでやるなよ、やったら絶交だよ」
こんな面倒臭い男のどこがいいんだろ〜、と真面目に思う。人が困ってても平気で見捨てるし、すぐ失礼なこと言うしするし。ちょっと気心知れてくると遠慮がなくなるところもどうかと思う。
「親指の爪割れていってえんだよ」
「マニキュア塗らないの?」
「塗ってるけど割れた」
「へえ、痛そう」
「他人事な」
「他人だからね」
「は〜、足の爪切ろ」
「水虫うつったらどうしてくれんの?」
「いや水虫じゃねーから」
まあ失礼なのはお互い様かもしれない。