「あ?何してんだみょうじ」
「あ、やっほー倉持君。休日までユニフォーム着て大変だね」
「オメーもな」
「保健室に何か用?」
「いや、お前何で我が物顔で保健室にいるんだよ」
「お留守番だよ!先生はさっき職員室に行ったよ!」
「マジか……じゃあ先洗ってくるか」
「手伝うよ!」
「いーよ。つーかお前は何でここにいんの」
「ぼーっとしてたら廊下で転んで擦りむいた」
「アホだな……」
「倉持君だって同じようなもんじゃないの?」
「いや、俺はぼーっとはしてねえし!名誉の負傷ってやつだよ」
私だっていつもぼーっとしてるわけじゃないけど、今日はちょっと調子が悪かったっていうか。休日スペシャル補習で勉強ばっかりしてたせいで、頭が働いてないっていうか。
「外の水道で洗うんでしょ?一人じゃ大変だよ、手伝うよ」
「俺今汗くせーし、きたねーし」
「あはは、普段と変わんないから気にしないよ!」
「どういう意味だコラ」
汗くさいのくらい我慢するし、汚いのは見れば分かる。別にそれくらい友達のためと思えば何てことない。
「うわ、水つめて」
「しょうがないしょうがない」
「つーか、いってえええ!」
「しょうがないしょうがない!」
擦りむいたらしい彼の肘は血まみれで砂まみれのグロテスクな有様だった。痛そう。すごく痛そう。
「さ、触るよ」
「何で!!!!!!」
「砂利が入っちゃってるから!!」
「お、俺がやるからお前は触んな、汚えから!」
「でもよく見えないでしょ!?何ならピンセットでやってもらう!?」
「それすげー痛そうじゃねえか!」
「しょうがないよ!!」
てんやわんやしながら何とか傷口の砂や血を落として、息をつく。まだ痛そうだけど……。もう先生戻ってきたかな?
「サンキュー、みょうじ」
「うん。まあほとんど騒いでただけだけど」
「お前本当いい奴だな」
「えっ、なに急に……どうしたの」
「お前誰に対しても態度変えねーじゃん。スゲーなって。超疲れそうだろ」
「だっ、誰に対してもは言い過ぎだよ!まあ、友達は大切にするけど……みんなそうでしょ?」
「俺友達あんまいねーから知らねえ」
「あ、ごめん……」
「でも、やっぱ誰に対しても、は言い過ぎだな。御幸には態度全然ちげーし」
「何で御幸が出てくんの?」
「逆になんで出てこねーと思えるんだよ」
「……御幸は友達……未満知り合い以上」
「評価ひっくいなアイツ」
みんなやたら私と御幸のことを気にするけど、私たちは君たちが望むような関係ではない。
「まあムカつくとこはあるし、優しくないし、扱い雑だけど、なんだかんだ一緒にいると楽しいよね」
「御幸と一緒にいて楽しいっつー時点でおかしいんだよ」
「な、なかなか酷いこと言うね……」
「お前らこのまま何事もなく卒業していきそうで怖い」
「それの何がダメなの!?」