「あ、降谷君だ」
「へえ」
「体育陸上なんだね〜、寒そう」
「へえ」
「うわ、興味なさそう。自分の後輩なのに」
「野郎のジャージ姿見て何が楽しいんだよ」
「一年生の女の子もいるよ」
「……どれ」
「ムッツリめ」
窓からグラウンドを見下ろすと、体育の準備をしている一年生がいる。降谷君と、その隣にいる女子みたいなピンクの頭の子は、確か小湊先輩の弟さん、だっけ。
「降谷君手振ってる。かわいい」
「あれ俺のこと見えてなさそう」
「でも隣の可愛い子は頭下げてるよ」
「小湊な。あいつそこらへんの女子より可愛くねえ?」
「可憐だ……」
「でも男なんだよな〜」
「やめてよ、ホモの友達とか絶対やだ」
「さすがにねえわ」
だけど、何かに目覚めてもおかしくないくらいには可愛らしい子だ。男の子に言うことじゃないけど。
「降谷君、ずっとこっち見てるな。私のこと好きなのかな?」
「はっはっは」
「えっ、その笑いは何?何笑い?」
「何でアイツ俺よりみょうじのこと慕ってんのかね……」
「御幸の性格が悪いからでしょ」
「はっはっは!」
「本当のことじゃん!あ、ちょ、苦し!ごめん!」
腕でがっと首を絞められて、息がつまる。苦しい!女の子になんて仕打ち!っていうか降谷君たち見てんのに!
「やめてよ、降谷君たち見てるから!恥ずかしい!」
「見せつけてやれば?ダメな先輩っぷりを」
「そういうことするから後輩から嫌われるんだよ」
「嫌われてはいねえよ、…多分」
「自信ないんじゃん……って、あ、ちょ、首!くるしっ」
ズルズルと窓から離される。首絞まってるんだって、普通に!
「もう授業始まんだろ、席座れ」
「なに急に真面目ぶってんの?」
「うるせえ、このまま落とすぞ」
「ぐっ、くる、しっ、てば!死ねバカ!」
「口悪〜〜」
「御幸先輩って、みょうじ先輩と仲良しですね」
「ん?ああ……」
「でも、痛いのはよくないと思います」
「いや、軽くしかやってねーよ?」
「女の子には優しくしろって、じいちゃんが言ってました」
「みょうじは女の子には含まれねーの」
「……先輩かわいそう」
「あっそう、じゃあ解散」
「えっ、まっ、球……」