まっすぐひねくれる | ナノ
「最近眠れないだあ?」
深刻な顔でうなづくと、御幸に頭をかるくはたかれた。
「疲れてるのに眠れなくて、もっと疲れる」
「ぶっ倒れるまで走れ」
「…脳筋野郎に相談した私がバカだった!」
「はっはっはぶん殴るぞ」
だって本当のことじゃないか。
「不眠症っていうの?ストレスかなあ」
「何のストレスだよ」
「女の子には色々あるんだよ」
「色々ねえ……」
何で御幸が納得いかないような顔をしているのは分からないし、分かりたくもない。
「つーかお前不眠って、授業中めっちゃ寝てんじゃねえか」
「……いやいや」
「いや爆睡だろうが」
「……」
「おいこっち向け」
「……授業中は眠くなるんだよ」
「真面目に授業でろよ」
「御幸に言われたくない」
「お前よりは成績いいから」
「はあ?私の成績表見たことないじゃん」
「はあ?見なくても分かるっつーの」
「ていうか、私これでも最近は特別補習やってもらって……」
「特別補習?」
怪訝な顔をした御幸に慌てて口を閉じた。特別補習は最近始まった、私のために先生方がいろんな教科をミッチリ見てくれている鬼のような補習のことである。
「お前……バカだバカだとは思ってたけど……」
「うるさいな!アンタが心配するようなことは何もないから!」
「一緒に三年生になろうな」
「哀れみを込めて言わないで!」
確かに私は頭は良くないけれど、今回の補習の目的は単位の先取りだ。留学が決まりそうだから、そのための。
卒業を待たずに、三年の夏にはここを発つことになるだろう。
「なんかお前、俺に隠し事してねえ?」
「は!?」
「悲しいな〜〜」
「いやいや。私だってなにもかも明け透けに生きてるわけではないから。隠し事くらいあるでしょうよ」
「俺はお前に隠し事なんかしてねえけど」
「息をするように嘘をつくな!」
私よりもむしろアンタの方が隠し事が多いだろ。
「まー何かあったら言えよ、聞いてやる」
「……えらっそーに何言ってんの。御幸テキトーなことしか言わないじゃん」
「思ったことを素直に言ってるだけだもん」
「なおさらタチ悪いし、もんとか使うな気持ち悪い!」
「……」
「ぎゃ、無言で頭ぐちゃぐちゃにしないでバカ!」
「バカはお前だ、バカ」
「雑!もっと丁寧に撫でて、撫でるなら」
「……了解」