「御幸さ〜〜ん、また告白されたんですって〜〜?」
「まあ……」
「で、またフったんですか?」
「まあ……」
「モテる男は余裕ですな〜〜」
「僻むな僻むな」
「は?僻んでないんですけど?」
「じゃあ俺の椅子蹴るの止めろ」
「すみませんね、足長いもんで!」
「……」
「あ、っぶな!蹴るなよ!」
「すみませんね、足長いもんで」
「ウッッッザイ」
「はっはっは、みょうじほどじゃねえよ」
お互いに上履きで攻防戦をしながら、にこやかに嫌味をぶつける。野球のことしか考えてないようなやつ、どこがいいんだか。顔か?顔なのか?これがびっくり、顔なんですね〜。
「ていうか、御幸さあ、彼女作りなよ」
「は?」
「いや、違うな。好きな子!好きな子作りなよ!」
「はあ?」
「テレビでやってたよ、初恋が遅いと無性愛者になる可能性が高くなるんだって」
「メディアの情報を鵜呑みにしちゃってんの?」
「そうやってひねくれてるから、心配なんでしょうが」
「……っていうか、初恋くらいとっくにすませてるけど」
「え!?」
「え?」
「…何でもない」
「あ、気になる?気になっちゃう?」
「ウッッッザイ!」
「俺の初恋はそう、12年前……」
「うわ、勝手に自分語り始めた」
別に気にならないし、聞きたくないし。
というさ12年前のそれって本当に恋に入るのかよ。知らないけど。
「まあとにかく、そういうことだから次余計な事言ったら殴る」
「ひどい仕打ち!」
「大体みょうじに何でそんなこと心配されなきゃいけねーんだよ」
「そ、それもそうだけど……」
「余計なお世話なんだよブース」
「そこまで言う!?」
ブスは関係ないし。何がそんなに気に食わなかったんだ?
「今は彼女も作る気ねーし。変な事言って俺を惑わさないでくれる?」
「えっ、そんなに欲しいなら作ればいいじゃん……自分にはウソつくなよ……」
「両立できる自信がない」
「うんまあすぐフられると思うよ、御幸デリカシー無いし」
「お前人のこと言えねえだろーが」
「…彼女は作らなくてもさ、好きな子くらいいた方がよくない?あの子のために打つぞ、みたいな」
「そんな邪な気持ちでヒットが打てると思ってんのか。野球ナメんなよ」
「ほんっと、野球に対してだけは真摯だよね!」
不器用かよ。バカみたい。
運動部のそれはわからないけど、モチベーションって重要なんじゃないの?違うの?
「逆に不健全な気がする」
「恋と性欲はちげーから平気だろ」
「……ウソでしょ、最低すぎる……」
「はっはっは」
「そんなんだからモテるくせに女の子寄ってこないんだよ」
「いやお前いるじゃん」
「え」
「え?」
「……いや、いるけどさ」
その言い方はちょっと違うような気がするし、なんか恥ずかしいし。あれ?耳の端が熱い。