「雪!雪降ってるよ御幸!」
「うん、見りゃわかる」
「私雪って大嫌い!」
「そんな目一杯の笑顔で……」
「寒い」
「うん、そうだな」
足の指にしもやけを患っている私にとっては雪は大敵である。
「見てる分には好きなんだけどね」
「へー」
「白くてキレイだし」
「語彙力のなさ」
「うるさい」
白い、冷たい以外に雪に対する形容詞出てこないし。
「雪か、うちのバカが騒ぎそうだな〜」
「バカ?」
「んー、一年の」
「ああ、降谷君じゃないピッチャー?」
「そうそう沢村な」
「あの子バカそうだもんね〜」
「お前に言われたかねーだろーけどな」
「あはは、ちょっと何言ってるか分かんない」
沢村君……見に行った試合ではベンチにいても存在感あったなあ。変な野次とか飛ばしてたし。ラジオ中継でも名前が出てたからすごい投手なんだろうけど……。
「御幸ちょくちょくその子の話するよね」
「は?」
「沢村君!よく名前出る」
「そうか?」
「自覚ないの?」
沢村君のことぜんっぜん知らないけど、素直でバカそうな子だったから、御幸との相性悪そうなのに。意外と可愛がっているらしい。
「まあアイツは投手で、俺は捕手だからな。面倒みてやんねーと」
「…いいなー」
「え、面倒見られてーの?」
「そうじゃねーよ!後輩!私もほしいなって」
「ああ、そっち」
「そっちもどっちもないし!」
「いや、別にお前も俺が面倒見てやってもいいけど?沢村とそんな変わんねーし」
「どういう意味だよ!?ていうかそうじゃないって言ってるじゃん!?」
「そういうノリが似てんだよな」
沢村君に似てるなんて言われても嬉しくない。だって男でしょ?しかもバカでしょ?全然ありがたくないんだけど。
「みょうじも沢村もバカ犬みたいだから、雪とか降るとめっちゃ騒ぎそう」
「ひどい偏見だな!」
「そうやってすぐ吠えるとこがバカ犬だっつってんだよ」
「ぐ……っ」
「まあ安心しろ、ちゃーんと躾けてやるから」
「えっ、こわっ!やめ、撫でるな!」