「お前今日顔違くね?」
「……もっと言い方ないの」
「何で化粧なんかしてんの」
「たまには女子力あげてみようかと」
「何その努力」
「いや何で半笑い?」
つくづくデリカシーのない男だな……。半笑いの御幸に顔をしかめる。
「学校来るだけなのに化粧なんていらねーだろ」
「もっと他に!言うことないの!?」
「あー、思ったより化粧慣れしてんのな」
「……舞台に立つときはいつもしてるからね!」
「何キレてんだよ」
「キレてない!クソ!」
「みょうじ、お前なんか今日可愛いな」
「だよね!?私今日可愛いよね!?」
「お、おう。スゲー食いついてきた」
松本君は今日もチャラいけど、彼の言う通り今日の私はいつもより可愛いはずだ。化粧だって下手じゃない、慣れてるし。それに松本君を含め、いろんな人が褒めてくれた。
「……はあ」
「何ため息ついてんだよ。みょうじらしくねーじゃん」
「ちょっと色々思うところがあって。松本君には分かんないだろうけどね……」
「はは、俺より馬鹿のくせによく言うな〜!」
「爽やかに罵倒されたんだけど」
別に、御幸に褒められようが貶されようが、関係ないんだけど。でも、少しくらい感想言ってくれてもよくないか?いや、化粧慣れしてるなっていう感想じゃなくて……こう、もっとさあ……。
「まあ、みょうじはスッピンでも可愛いよ」
「ああ、うん…知ってる」
「あ、そこは反応薄いんだ」
魚の小骨が喉につっかかってるみたいに、御幸の反応が気になって仕方ない。わざわざ褒めてくれてるの松本君に少し申し訳なくなる。
「明日からもしてこいよ、メイク」
「……ううん、めんどくさいし。改めて考えると学校行くだけなのに化粧する必要なかったなって」
「どうした?何でそんな凹んでんの?」
「凹んでません」
「じゃあ何でそんな暗……」
「それ以上つっこんできたら、隣のクラスの桜井さんにあの話暴露するぞ」
「やめて!え、なんで俺の好きな子知って……ていうか、あの話ってどの話!?」
「私の情報網なめないで」