「御幸先輩!!!!!」
響き渡る大きな声に、クラスメイト全員が動きを止めた。廊下から大声を発したその人は意気揚々と教室を眺め回している。
「え、栄純君…そんな大きな声出しちゃダメだよ」
「うるさい」
そのうるさいのに続いて顔を覗かせる可愛い子とクールそうな男子。なんだなんだ。御幸に用か?
「あ、あれは野球部期待の一年生…降谷、沢村、小湊(弟)!」
「説明ありがとう山崎君!」
「御幸君ならいないよ、倉持君も」
クラスメイトの迅速な状況説明により私にも事態が把握できた。なるほど、野球部ね。
「どこ行ったかわかりますかね!?」
「え、なんで私に聞くの…というか近いし怖いし」
「栄純君!」
「なんか一番知ってそうだったんで!」
「野生の勘!」
「すみません、よく言って聞かせますんで…」
野生の勘で御幸の隣の席の私を選ぶとは。
それにしても全力投球で生きてます感がすごい子だ。そしてそれを諌めるピンクの髪の可愛い子。この子はまちがいなく小湊(弟)だ。だって三年生によく似た髪の人いる。あんな色の人なかなかいないからな。遺伝でピンクってどういうDNA構造してるんだろ。
「御幸と倉持君なら、たぶんもうすぐ戻ってくるんじゃないかな」
「そっすか!」
「もう授業始まるし」
「えっ!?本当だー!!」
「僕たちも教室戻らなきゃ怒られるよ」
「そうだね」
わちゃわちゃ相談しだした。なんだろう。このトリオ感。かわいいかもしれない。
「じゃあ俺らは一旦帰りますんで、御幸によろしく伝えてください!」
「お騒がせしてすみません…ほら、もう行くよ、降谷君も!」
「うん」
「クソー!御幸の野郎いねえじゃねえか!倉持先輩も!」
「栄純君!」
「あ、うん…おつかれさまでーす」
嵐のような一年生だったな…。
それにしても何しに来たのか、まったく分からなかった。
「よろしくだって」
「は?」
「エイジュンクンと小湊(弟)と、無口の子がさっきすごい勢いで来て、すごい勢いで去っていった」
「ああ、あいつら。何で来たの?」
「知らないよ、部活の時にでも自分で聞いてよ」