「おなかすいた」
「な〜」
「まだ授業あるよ〜お昼じゃないよ〜」
「数学だぜ」
「う……」
「泣くなよ」
おなかすいたし、数学できないし。
「これ食う?」
「…お菓子?」
「お菓子」
「食べたい」
「おー、やる」
「御幸食べないの?もらっていいの?おなかすいたんじゃないの?」
「うるせえよ、黙って食っとけ」
「食うけども」
チョコレート菓子の封をあける。あ、これ私が好きなやつだ。なんかたまに、御幸お菓子くれるんだよな〜。飴と鞭の使い分けなのかな何なのかな。まあ何にせよ食べるんだけど。
「これ美味しいよね〜。このシリーズ、季節限定のやつも出るんだよ」
「前食ってたよな、みかん味」
「全然違うし、甘夏だし」
「そんな変わんねーじゃん」
「これだから男子は!」
大雑把というか何というか。甘夏と蜜柑じゃ、味も香りも別物だし。
「ていうか、なんか人のもの一人で食べるのもあれだし、一緒に食べようよ」
「いらない」
「おなかすいたに同意してたじゃん!」
「…しょうがねーな。何で変に強情なのお前」
「御幸から恵んでもらったみたいで嫌なの」
「一緒に食っても変わんねーよ」
「変わる!」
「御幸君って甘いもの嫌いなんだって」
「あー、それね。差し入れとかも甘いものだと断るらしいよ」
「え!?」
「どうしたみょうじちゃん」
「もしかして、知らなかったの?」
知らなかった。
今まで結構甘いもの勧めちゃったし、食べさせちゃってような……。
「そういえば、みょうじちゃんは甘党だよね」
「糖尿になるよ、糖尿に」
「気をつける」
あれ、なんで甘いものが嫌いで、差し入れも受け取らないのに、お菓子持ってたんだろう。