「お父さんがさ、新しい炊飯器買ったんだ」
「へえ」
「まだ家にある炊飯器壊れてないんだよ?でも買って来ちゃったんだよ」
「金の使い方すげー」
「で、一個いる?」
「は?」
「炊飯器……」
「いらねえよ」
「やっぱり?みんなに断られた」
「ヤフオクで出せば」
「結構古いやつだよ?」
「じゃあ捨てる」
「まだ使えるのに」
「みょうじ意外ともったいない精神持ってるよな」
寮生である御幸にはいらないよな、炊飯器。でも、じゃあどうしたらいいんだ……。
「ここに置いとけば?」
「は?」
「コンセントあるし」
「……」
「自由にお使いください、みたいな」
教室に、炊飯器。なるほど。
「採用!」
「みょうじ!教室に炊飯器持ち込むな!アホか!」
「ゲッ、先生」
「何で教室で米を炊くんだ、保温するな」
「た、たのしいかな〜って」
「そんな楽観的な感情で学校の電力を勝手に使うな!」
「ごめんなさい」
怒られた。
クラスメイトには、そこそこ人気なんだけどなあ。特に運動部男子。
「でもこれ御幸君の提案です」
「みょうじテメエ」
「私のことそそのかしてきたんです!」
「そうなのか御幸!」
「そうです!」
「勝手に答えんなみょうじ!違いますよ!」
「御幸テメエ!」
「お前ら両方に問う。バツ掃除と反省文、どっちがいい?」
「……」
「……」
「御幸のせいだ……」
「いや、採用したのお前だから。ふざけんな」
結局バツ掃除として教室の掃除を命じられた。悲しい。
「でもまあみんな喜んでたし、いっか」
「お前……いいやつだな」
「知ってる」
「俺を巻き込んだことは許さないけどな」
「御幸の提案じゃん、本当のことじゃん」
「だとしてもだ」
「うっわ、ちっさい男だな〜」
「ん〜?」
「いった!いった!!!」
「何度も言うな」
「痛いんだよ!叩くなよ!」
ほうきを持ったまま御幸に詰め寄ったら、また叩かれた。さっきからコイツ人のことをバシバシバシバシ……叩きすぎだ!
「いいからさっさと終わらすぞ」
「はいはい」
「なあ炊飯器撤去すんの?」
「は?しないよ?」
「……」
「……」
「また怒られんじゃねーの、それ」
「怒られるかな」
「マジかお前」
このあとめちゃくちゃ掃除した。