「クリス先輩!」
「みょうじ」
「お久しぶりです!」
「ああ」
久しぶりにクリス先輩を見かけた。相変わらずかっこいい……。
「お茶ですか、渋いですね。さすが!」
「何が流石なのかは分からないが、ありがとう」
「私もお茶買おう〜」
自販機でお茶を買う先輩もかっこいい。本当はジュースが飲みたくて来たけど、先輩を見習ってお茶を買うことにした。
「ていうか、先輩!おねえちゃんと知り合いだったんですね!」
「ああ」
「何で言ってくれなかったんですか!」
「…言ってなかったか?」
「聞いてないですよ」
「それは悪かった」
「本当ですよ!」
さらにそのおねえちゃんといい感じなことも知っておきたかったわ!
「よくお姉さんがお前の話をしていたんだ」
「えっ、悪口ですか」
「半々だな」
「うわ〜あの人性格悪いな〜」
「褒めてたところもあったぞ。特にピアノに関しては」
「……それはそれで、照れますね」
「だから最初に音楽室で会った時、自然と話しかけてしまったんだ」
「ほお」
「聞いていた通りの面白いやつだった」
「それ褒めてます?」
「褒めてるさ」
お金を入れて、お茶を買う。クリス先輩の声は相変わらず小さいけれど、その奥ゆかしさがやっぱり素敵だなと、話題とは全然関係ないことを思った。
「先輩、おねえちゃんのこと好きですか」
「……」
「せんぱい!滝川クリス優先輩!」
「大声で名前を呼ぶのはやめてくれ……」
「おねえちゃんは、確かに性格はちょっと歪んでますけど!優しい人なので!」
「……」
「泣かせないでくださいね!」
「……お前たちは、まるで本当の姉妹のようだな」
「従姉妹ですけど!」
でも、家族だ。
「あと、私クリス先輩のことちょっと好きだったんですよ。ここだけの話」
「…実は、知っていた」
「え!?」
「御幸と倉持が部室で話しているのを聞いてしまって。みょうじの態度も、おかしかったしな……」
「最悪だあいつら!!マジか!!え!マジか!!」
「すまない……」
「あ、先輩は悪くないです、すみません、あの、取り乱したりして」
「いや、取り乱す気持ちは分かる。俺もどんな顔で部室に入ればいいのか分からなかった」
「本当すみません、あとで言っておきます……迷惑かけてすみません……」
私の知らないところでそんな迷惑をかけていたなんて。というか何であの人らベラベラ喋っちゃうの?バカなの?
「気持ちは嬉しかった。答えることはできないが」
「充分です……」
「そうか」
「あ、おねえちゃんの秘密教えてあげましょうか?色々弱味握ってたほうが扱いやすいですよ」
「…本当に似た者同士だな」
「ええ?」
「あの人も、御幸にそんなことを言って絡んでいた」
「……い、いつの話ですか、何を言ったんですか」
「最近、試合を観に来たぞ」
「あれ私それ知らない……」
「内緒で来たって言ってたからな」
「なぜだ」
試合ってことは土日か……レッスンだったからなあ、私。余計な心配かけると思って言わなかったんだろうか。色々と。
「まあ、仲良くやれ。御幸とも」
「いや、このあと多分ケンカになります」
「……仲良くな」
やつとは、色々話すことがある。