「やっほ〜降谷君」
「あ、何してるんですか先輩。こんにちは」
「委員会の仕事」
「ふーん」
「図書を延滞してる人に警告のお手紙を持ってまいりました〜〜」
降谷君の名前はなかったけれど。
「大変そうですね」
「そうでもないよ。こうやって降谷君とも会えるしね」
「かっこいい……」
「これ、配布お願いします。隣のクラスにも行かなきゃいけないから」
「はい」
「…降谷君、爪」
「……あ」
「割れかけてるよ!?大丈夫!?」
「大丈夫じゃないです」
「ちゃんとしないと!御幸に怒られるよ!」
「はい」
「はいじゃないよ、もー!あ、そうだ、私のトップコート使う!?高いやつもらったんだ!」
野球選手にとっても演奏家にとっても爪のケアは欠かせないものだ。
「でも、悪いんで」
「使わないなら、他の人にあげるとか、捨てるとかしちゃっていいよ。いっぱいもらったからさ!あ、でも家だから後日になっちゃうんだけど」
「いいんですか」
「うん、いいよ。爪が大事なのは野球もピアノも一緒だからね。親近感わくというか」
「みょうじ先輩の手のほうがずっと綺麗ですけど」
「えっ、そうかな」
「白くて、指が長くて」
「え〜〜でも、ピアノやってるからさ、骨が太くて、あんまり女の子らしい手じゃないよ」
「僕は、女の子っぽい手だと思いますけど」
「もう、やだな、降谷君会うたびに褒めてくれるんだから」
「全部本当のことですよ」
「照れるな〜。あ、トップコート、御幸か倉持君に渡しとくね」
「はい」
「御幸に見つかる前に、爪、補修しなよ!あいつ口うるさいから」
「はい」
「あ、御幸。これ降谷君にあげて」
「何?」
「トップコートとか、爪やすりとか。ほぼ新品だから安心してと伝えて」
「これいいヤツなんじゃねーの?」
「うん、まあ相場から考えると高いやつだよ」
「いいの?」
「うん」
「あいつに貢いでんの?」
「言い方な。貢いでるわけじゃなくて、可愛がってるの」
「180以上ある男に可愛がるってなかなか気持ち悪いな」
「うるさいな可愛い後輩じゃん。素直だし、いい子だし、素直だし」
「お前が野球部だったら、きっとそんなこと言えねーぞ」
「私野球部じゃないもーん」
「まあ別にいいけどね。渡しとくわ」
「うん。一応多めに入ってるから、欲しい人いたらあげて」
「…なんの慈善事業?」
「お父さんのツテで結構たくさん送られてきたんだ〜。あっても困らないけど、場所とって邪魔だし」
「お前たまに金持ち発言するよな」