「御幸って眉毛太いよね」
「そう?」
「うん」
「何、整えろって?」
「いや別に……」
ただ思ったことを口にしただけだ。
「気にしたことねえけど」
「そのまんまでいいと思う」
「あっそう」
「眉毛細い御幸とかなんかやだ。チャラさに磨きがかかる」
「硬派な高校球児になんつーこと言うの」
「硬派っていうのはね、ああいう人のこというんだよ」
「だれ?」
「ほら、あそこにいる現国の教師」
「監督かよ……」
「片岡先生って硬派な感じするよね」
「みょうじは俺にああいうのを求めてんの?」
「……いやいやいや」
「何その間」
隣の席が片岡先生とか嫌すぎる。あ、嫌とかそういうのじゃないけど、なんていうか……その……うん……。
「御幸の眉毛ももみあげも、そのままでいいと思うよ」
「はあ」
「それなかったらただのイケメンになっちゃうし」
「今の俺は何なんだよ」
「眉毛ともみあげが立派なメガネ」
「おい、イケメン要素消えたぞ」
「もー注文が多いな!大丈夫、そのままでも御幸一也はイケメンですよ!」
「投げやりだな〜〜」
だってイケメンイケメンうるさいから。
「その眉毛もかわいいよ」
「…それはそれで、嬉しくねーんだけど」
「せっかく褒めてんのに」
「女子のいうかわいいがイマイチよく分からん」
「女子とほとんど関わってないくせによく言うよ」
「ちょっとは関わってるわ」
「は?何?他の女子にも眉毛かわいいって言われたの?は?」
「何キレてんだお前……」
「キレてないっすよ!!」
「ここで長州を持ってくるのかよ。つーか何?嫉妬?眉毛に?マジか」
「はあ!?なんで!私が!御幸の眉毛に!嫉妬しなきゃ!いけないんですか!!!!」
「うわっ、声でけーな。うるせーよ」
「御幸が声張らせるようなこと言うから……」
「は〜…お前な、嫉妬するならもっと可愛くしろよ。一ミリもときめかなかったぞ」
「嫉妬じゃないし、嫉妬だとしても理由がくだらなすぎるわ、バカか」
「はっはっは、確かに」
友達に対して嫉妬するとか、っていう話はよく聞くし、ちょっと分かる気もするけど、何だろう。御幸はそういうのじゃない気がする。嫉妬なんてしたら、ダメ、みたいな。なんでダメなのかは分からないけど。
「にしても、そんなにみょうじが俺の眉毛好きだなんて知らなかった」
「別に好きじゃねーよ」
「かわいいんだろ」
「かわいい」
「好きじゃん」
「好きじゃない」
「やっぱ女子のかわいいってよく分かんねーわ」
「分かんなくてもいいよ」