「あれ、おねえちゃん、もう帰ってきたの」
「もう10時だもん」
「てっきり朝帰りかと……」
「とか言いながら、睨みつけるのやめてよね」
だってムカつくんだもん。
「くそ、幸せそうな顔しやがって」
「見て〜〜これもらった〜〜」
「ずいぶん可愛いネックレスですね!!」
「えへへ〜〜」
「……」
「あんたもプレゼント用意してたんじゃないの?彼氏に」
「ただのお詫びだし彼氏じゃないし。虚しくなるから言わないで」
「まあスポドリの粉とプロテインじゃあ、クリスマスプレゼントにはならないわよね!」
「なんで知ってるの!!」
どこから情報が漏れたんだ!?
「あはは、色気ねえわ〜」
「おねえちゃんお酒飲んでない?」
「ちょっとだけ」
「酒癖悪いんだからやめときゃいいのに」
「クリスが帰った後だもん、別にいいでしょ」
「途中で別れたの?」
「未成年そんな長く連れまわせないわよ!」
「そこはしっかりしてるんだね」
おねえちゃんはこう見えて、結構まじめだ。
「ごめんね」
「え?」
「私のこと、嫌いになった?」
「どうしたの、おねえちゃん」
「ごめん〜〜……」
「な、泣かないでよ……嫌いになってないし……めんどくさいなこの酔っ払い」
「でも、クリスはダメだから〜〜」
「……あ〜なるほど」
酔うとすぐ泣いてしまうんだから、この人は。
「…ピアノ弾いて」
「急になんだよもう……しょうがないなあ」
「わたし、あんたのピアノ大好き」
「ありがと」
「大好き」
「うん」
「ごめんね」
「うん」
大丈夫だよ、ちゃんと分かってるよ。謝る必要なんてないよ。泣かないでよ。
「何弾く?」
「…さやかに星はきらめき」
「また微妙にマイナーな賛美歌を……待って、楽譜ないとそれ無理だわ」
「右の棚の奥から二番目」
「だからなんで知ってるの」
「知ってるよ、家族だもん」
「…従姉妹でしょ」
「家族だよ」
「そっか」