「くーらーもーちーくーん!」
「うおっ、うるっせ!何だ、みょうじ!?」
「練習終わったー!?」
「見て分かんだろ!終わってねえよ!!」
「りょうかーい!!!」
「んな遠くから声張ってんじゃねーよバーカ!!」
「ごめーん!!」
音楽室からグラウンドに向かって叫んだら、倉持君に怒られた。まだ練習中か。申し訳ないことをした。
「おつかれ〜」
「何やってんだみょうじ」
「倉持君待ってた」
「はあ?」
「嘘です。御幸にノート返そうと思って」
「そんなもん明日返せばいいだろ、何でこんな時間まで待ってんだよ」
「うん」
「うんじゃねえよ……はあ、待ってろ、呼んでやるから」
「いいよ、これ、返しといて」
「それだけで待ってたんじゃねえんだろーが!」
……バレてるし。
グッと押し黙る私を見て、倉持君は御幸を呼びにどこかに行ってしまった。
ああ、もうなんか、いたたまれない……何こっぱずかしいことしてんの私…。思わずしゃがみこんで、自分の腕に顔を埋めた。
「何やってんのみょうじ」
「…さ、さむくて」
「まあこんな時間まで外にいりゃあ寒いだろうな」
「うん。あ、これノートありがとう」
「おう」
「……」
「……」
「……」
「…で?」
「えっと、」
「何きょどってんだお前」
「うるさいな!ちょっと待ってよ!」
口元を隠すようにマフラーを引き上げる。練習終わりの御幸の髪はぺったんこである。寒いのに帽子かぶってないんだな〜。
「この前!迷惑かけてごめん!これお詫びの品だから!」
「は?」
「早く受け取れ!」
「…おお」
「別に、クリスマスとか関係ないから、勘違いしないでよねっ!」
「おーい、ツンデレ出てんぞ〜」
「茶化してないと自我を保ってられないの!」
恥ずかしさで。
「サンキュ」
「……うん」
「これ渡すために待ってたとかお前俺のこと超好きだな」
「別に、さっきまで練習してたから。そんな待ってたわけじゃないし」
「クリス先輩には渡さねえの」
「…おねえちゃんから何かもらうんじゃないんですかあ?今頃デートでもしてるんじゃないんですかあ!?」
「ああ、どうりで」
「……」
「ごめんごめん、俺が悪かったから泣くな」
「くそ、世の中のアベックみんな別れろ……」
「アベックとか死語だぞ」
「ううう、帰る……」
もう寒いし、小林さん待機してるってメールきてたし。つらい。帰っても1人なこともつらい。……静かに寝よう……。
「送ってく」
「えっ、車だからいい」
「……」
「何」
「あー、俺も彼女いねえから」
「だから!?」
「安心しろ」
「ど、どういう慰め方だよ!」
「はっはっは」
フォローするにしても、もっとあっただろうに。慰め方下手かよ。思わず笑ってしまった。
「あんたの恋人は野球でしょ」
「お前の彼氏もピアノだろ」
ふっ、と吐き出した笑いは白い色をしていた。クリスマスイブだもん。そりゃ寒いわけだ。