「倉持君」
「仲直りしましたか」
「しました、すみません」
「教室の真ん中で堂々と喧嘩してんじゃねーよ!しかも低レベルな!」
「すみません」
「オメーらのせいで教室が変な空気になったんだぞ!」
「反省してます」
ごめんね、倉持君。なんだかんだ言って面倒見がいいのだ。
「仲良くしろとは言わねえけど、ケンカは止めろ」
「うん、もう絶交は解消した」
「小学生かよ」
「なんか情緒不安定だったからさ〜、ついね〜」
「それはいつもだろ」
「そんなことはない」
「いや、ある」
「……まあ感情的とはよく言われるけど」
演奏での話である。
「つーか、御幸はほっといていいのかよ」
「あの人トイレ行ったっきり帰ってこない」
「ウンコか」
「下品だよ、倉持君!あとウンコにしても長い」
「お前も下品だよ」
「……こういうとこがダメなのかなあ」
「は?」
「私が可愛くないって話」
「まあ可愛い女子はウンコとか言わないわな」
「は?倉持君、女子に夢見すぎ」
「お前こそ俺の夢を壊すなよ」
「これだから童貞は……アイタタタタ!ヘッドロックは!ヘッドロックはダメだよ!ギブギブギブ!」
ブスも美人も関係なく、誰でもウンコくらいは言うと思う。ていうか躊躇なくプロレス技を女子にかけないでもらいたい。
「お前は確かに可愛くないし、守ってやりたいとも思わないし、色気もない」
「ちょ、罵倒する前にヘッドロック解除してもらってもいいですか……身も心も痛いんですけど……」
「でもみょうじはそれでいいだろ」
「よくない!」
「いいんだよ!」
「じゃあ倉持君私と付き合って!」
「やだよ!!!!!」
「ほらーーー!!ダメじゃん!!!」
結局、私は可愛くないし、守ってあげたくならないし、色気もないからダメなんじゃん!
ヘッドロックかけられたまま頭をワシャワシャと撫でられた。ちょ、髪がぐちゃぐちゃに!容赦ない!
「お前は余計なこと考えなくても充分おもしれーよ」
「別に面白さは求めてないけどありがとう……」
「お前がモテなさすぎて行き遅れたとしても、貰ってやるから」
「え!」
どきっ。
「御幸が」
「まさかの他人に丸投げ!!」
ヒャハハ!と独特な笑い声をあげる倉持君につられて、私も笑ってしまう。倉持君なりの励ましは、遠回りすぎて逆に直球だ。