まっすぐひねくれる | ナノ
「せんぱい」
「……あー降谷くんだ」
「はい」
「おはよう」
「おはようございます」
こんな学校開いてすぐにいるとか、どんだけ早起きなんだ。私も人のこと言えないけど。
「いつもこんな早く来てるの?」
「大体」
「へ〜〜何してるの?」
「…走ったりとか」
「ふーん、えらいねえ」
「先輩は何でこんなに早いんですか?」
「ちょっとピアノ弾こうかなって」
「……」
「ほら、家だと近所迷惑になるからさ〜。学校ならまだ人少ないでしょ?」
「みょうじ先輩」
「何でしょう」
「大丈夫ですか?」
鈍いようでいて、なかなか鋭い男である。
「…降谷君、ここだけの話。私風邪引いてるの」
嘘である。
「えっ」
「ちょっと体調悪いだけだから、心配はいらないよ」
「か、帰った方がいいんじゃ……」
「降谷君、それでも人には、やらなきゃいけない時があるんだよ」
「そうなんですか」
「そうなの」
「はあ」
「まあちょっと無理したくらいじゃ死んだりしないから、安心してよ」
「…これ、使いますか?」
「……カイロ?」
ごそごそとジャージのポケットから降谷君が取り出したのは未使用のポケットカイロだった。
「前から先輩にあげようと思ってました」
「えっ、ありがとう」
「死にはしないかもしれないけど、やっぱり心配なので、あんまり無理しないでほしいです」
「……うん」
「?、泣いて…?」
「ごめん、ちょっと罪悪感がすごくて泣きそう……」
「?」
「うん、ありがとう降谷君。私、もう少し頑張ってみるよ。整形はまだしない」
「整形……?」
「ランニング、がんばってね!降谷君こそ風邪引かないように!」
「あ、はい」