「高校生にもなって社会科見学とかさ〜」
「文句言うなよ、御幸一也!」
「なんでお前そんなワクワクしてんの?」
「工場とかそういうの面白い、楽しい」
「分かんねえわ」
「御幸に理解求めてないから別にいいよ」
「チッ」
「舌打ち!?ていうか何でここ座るかな!後ろ行けよ!」
工場までは片道一時間、バスで向かう。酔いやすい人は前の方と決まっていて、まさしくそれに当てはまるのが私である。
「だって、もう他に座るとこねえし」
「倉持君の隣か、シオリちゃんの隣空いてるけど」
「気まずいだろ。倉持に至っては来るなとばかりにこっちを睨んでるし」
「え〜〜私、御幸と仲良いと思われたくないんだけど〜〜」
「今更だし失礼だな」
「ふつう男子は男子と座るでしょ、ふつう!」
「なら、何の問題もねえな」
「待って、私男じゃない」
失礼なのはどっちだ。私の隣に腰を下ろした御幸を睨む。近い。落ち着かないからどっか行ってくれないかな。
「そんなに俺の隣が嫌なの」
「嫌っていうか……まあ、嫌か」
「うわ〜悲しい」
「ほかにバス酔いしやすい人いたら、御幸邪魔だし」
「真面目か」
「うっせ、教室でも隣並んで授業受けてるのに、わざわざバスでも隣にいる必要ないし」
「……ああやって後ろで騒いでる男子の中に俺が入っていけると思う?」
「………ごめん」
「はっはっは、謝られたらそれはそれで傷つく」
「御幸ほんと友達作りなよ……」
「マジトーン」
「……」
バスが出発して20分。隣では御幸一也がぐーすか寝こけております。
「(重い……)」
バスが揺れるたびにこっちに寄りかかってくる御幸をその度に押し戻すのだが、これが結構きつい。重労働である。
「もう御幸おまえ起きろ!さっきから鬱陶しい」
「……ん?」
「だから、邪魔だから起きてってば」
「…んだよ、うるせーな。俺は眠い」
「私の迷惑も考えてほしいんですけど!」
「うるっせ……あー、もうこれでいいだろ」
「!?」
頭をぐっと引かれて、御幸に寄りかからせられた。と、同時にその私の頭にやつの頭が乗せられる。
「?、??…!??」
「これなら、お互い寄りかかってんだから平気だろ」
「だ、え?寝ぼけてんの?マジで言ってる?」
こんなの、少女漫画の世界の住人か、バカップルしかやらないだろ。確かに寝るには丁度いいかもしれないけど。
「ん〜……」
「は、恥ずかしい奴だな……」
「……」
「寝るなよ……」
返事がない、ガチ寝の態勢に入ったようだ。
ため息をつく。マジかよ御幸一也……。
「(相手は御幸とはいえ、さすがにこれは……)」
こんなに耳が熱いのは御幸にされたからじゃない。誰にされたってこんなのドキドキするに決まってる。私は男経験ほぼ0のド処女だぞ!!ナメてんのか!
「(マジか…マジかああ……)」
満更でもないとか思ってるのは、シチュエーションにだ。決して、コイツだからじゃない。