「お前ネコ好きなの?」
「あ?うん。ていうか何で人のスマホ勝手に弄ってんの?」
「画像フォルダすげーネコだらけ」
「何でロック解除できてんだよ、怖い」
「飼ってんの?」
「うん」
「かわいいな」
「え、御幸って何かをかわいいと思う心あったの?」
「はっはっは、失礼だな」
人のスマホのカメラロールを勝手に見るとかプライバシーの侵害だと思うんだけど、見られて困る画像が入っている記憶は特にないから放っておこう。
「俺と倉持の写真のフォルダ名がマスコミ用なんだけど」
「マスコミ用だからね」
「本当ひでーわお前」
「倉持君には言わないで」
「聞こえてるぞみょうじ」
「うわ、まじで。倉持君ごめん」
「俺の写真だけ消しとけよ。御幸のは好きにしろ」
「いや御幸のこそいらない…」
「本人を前にしてなんつーこと言うの」
御幸からスマホを奪い取る。これ以上こいつに持たせたら、きっとアドレス帳の人の名前がすべて歴史上の人物にされるとかそういう意味のわからないいたずらをされるに決まってる。
「さっきのネコのやつ送ってくんね」
「ネコ?どれ?」
御幸が私の手首をつかんで、スマホを覗き込む。うわ、近い。
「あー……これ」
「お母さんが撮ったやつか、私映ってるからイヤだ」
「安心しろ、トリミングする」
「それはそれで腹立つな…」
「LINEでいいぜ」
「何で上から目線なのか分からない」
「ネコかわいいな」
「まあかわいいけど」