「みょうじなまえ」
「はい!」
「お前このままだと夏休みないぞ」
「はい!?」
「この成績じゃあなあ」
担任の先生に職員室に呼ばれ、私はヤバすぎるテストを返却された。何だこれは、ほとんど丸がついていない。
「困ります!夏休みはほしいです!」
「困ってるのはこっちだよ。お前進学する気ないの?」
担任の先生は重々しいため息をついた。そして、終業式の日の放課後に行われる追試に合格すれば、夏休み中の赤点者補習は強制にはならないと言われた。しかし私は成績が酷すぎるため、可能な限り自主的に参加しろと先生は言う。
「まあ夏休み中も部活動で学校には来ますから、そのついでになら受けてもいいですよ補習!」
「なんで上から目線なんだよ留年さすぞ」
「中学でも留年ってあるんですか!!!」
「と、いうことで先輩、私に勉強を教えてください!」
「ぜっ……たいに嫌だ」
「なんでですか!」
「絶望的に飲み込みが悪そうだからだ」
完全に想像で物を言っているゴクデラ先輩に頬を膨らます。実は私は先日、掃除をしているときに、適当に放られた先輩の試験の答案用紙を拾った。なんと満点という輝かしい数学のテストに、私の目はくらんだ。
「今後、ご飯代は頂きません。だから代わりに勉強を教えてください!」
「……」
「せめて、せめて夏休み前の追試だけは乗り切らないと……私夏休みなくなっちゃうんです!」
「……」
「今承諾していただければ、今日の夕飯にデザートを付けます。プリンです」
「……オレは優しくねえぞ」
先輩はプリンにつられたのか、受け入れモードである。さすが、プリン!
「がんばります!よろしくお願いします!」
「ッヅァ!」
「なんっっっかい言えば分かるんだお前は!!ふざけてんのか!!!」
何度も同じミスをする私に先輩はキレた。テキストでぶん殴られ、ウルトラマンみたいな声が出てしまった。ひどい。
「ふざけてません!真剣です!」
「なおさら救いようがねえ」
先輩は大きなため息をついて、分かった小学生からやりなおすぞと言った。小学生から……。
「そ、その前にご飯にしましょう!今日はカレーです」
「カレーか」
「夏野菜たっぷりカレーです!栄養もカロリーもたっぷりですよ」
先輩はめちゃくちゃスパルタだったけれど、小学生からやりなおしてくれて、私の学力は飛躍的に上がったのであった。
「追試、合格でした!先輩ありがとうございました」
「ったりめーだ」
「ギリギリで!」
「あんだけやってギリギリってどういうことだよぶっ飛ばすぞ」
「痛いです先輩!」
思いっきり鼻をつままれた。