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セピアの日々
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ヒバリさんが帰還、という情報を得たので、さっそく報告書を片手にヒバリさんに会いに来た。
しかし、どうやらタイミングが悪かったようだ。
「ヒバリさん、いやです」
「……」
壁に押し付けられて、キスされそうになったので、彼の口許を両手で覆って顔から遠ざける。ヒバリさんは、私のその態度にあからさまに不機嫌になったけれど、私にだって拒否権くらいはある。
近くによられて気付いたのだが、変な匂いがする。香水、女物の香水だ。おそらく発生源は彼のスーツ。
「報告書を渡しに来ただけなので……」
「随分ふてぶてしい態度だね」
「そうですか?いつもと変わらないと思います」
こう見えてヒバリさんは、私が嫌だと言うと手を出してこないことが多い。本人いわく、嫌がってる女を抱く趣味はないのだと。普段は嫌だと言わないだけで別に喜んで抱かれてるわけでもないのだが、それを言ったらさらに機嫌を損ねそうだから黙っておく。
「ヒバリさんも早くシャワー浴びて休んだらいかがですか。お疲れでしょう」
「何へそ曲げてるの」
「別に曲げてません」
「……ああ、匂い?」
私の髪の束を手ですくって遊びだしたヒバリさんから顔を背ける。
少し無神経すぎやしないか。さすがに私でも、別の女性の匂いがする人の腕の中にはいたくない。
「私この匂い嫌いです」
「君は女物の香水全部にそう言うね」
「……とにかく嫌いなんです」
うっすらと笑みを浮かべて髪をいじっているヒバリさんが恨めしい。何も面白くないのに何を笑ってるんだろう。腹立たしいな。
「……」
「……」
「……」
「……シャワー浴びてくる」
むすっとしている私の雰囲気が伝わったのか、ヒバリさんはスッと私から離れた。生まれた距離に安堵する。ばさりとスーツの上着をソファに放り投げてられた。
「僕が戻るまでそこにいること」
「えっ」
逃がしてはくれないらしい。


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