「はい、この問題、みょうじさん。前に出てきて解いてください」
「えっ!?」
「えっじゃないです、早く出てきてちょうだい」
「先生私寝てました!」
「だから当てたんです」
せ、先生!!ただでさえ分からない数学を寝ていた私にはこの問題はちょっと難しすぎるんじゃないですか!
仕方なく席を立つ。さっぱり分かんねーなこりゃ。
「みょうじさんみょうじさん」
「……御幸君?」
隣の席の御幸君がこそっと話しかけて、自分のノートの端っこをトントンと叩いた。……。
「……みゆきくん……」
答えを教えてくれているらしい。私が感動していると、御幸君は親指を立てた。なんだこの人、クールぶったいけ好かないイケメンだと思ってたけど、意外といい人じゃん……。
御幸君の教えてくれた答えを胸に、前に行って、チョークでそれを書く。いや〜助かった〜。
「……みょうじさん」
「はい」
「この式からどうしてこの答えになるのかしら?」
「……はい?」
「どっから出してきたのこのXとY!計算式のどこにもないじゃないの!」
「えええ」
バッと御幸君の方を見ると、彼は机に突っ伏して震えていた。わ、笑ってる……!?そして私はそこで自分が騙されたことに気づいた。
「このままじゃ単位あげられないわよ!」
「えっ、えええ!?」
「御幸一也ァ、ちょっと話があるんだけど……」
「まーまー、そう怒んなって」
「怒るわ!よくも間違った答えを堂々と書かせたな!」
「いや〜まさか引っかかるとはな〜」
「ひどすぎる!この鬼!メガネ!訴えてやる!」
「みょうじさんってなんかこう……イジリ倒したくなるんだよな」
「最低だ!最低だよ御幸君!」
「ごめりんこ」
「……少しは反省しろ!」
「うわぁ!?殴りかかってくんなよ!」
「割る!そのメガネ割る!」
「やめろ!」
「やめない!お前を殺して私は生きる!」
「そこは自分も死ぬとこだろ!つーか殺すな!」
「うるせー!」
のちに倉持君は、「あんな、藤◯・F・不◯雄の漫画みたいなケンカを見たのは初めてだった」と語った。